体の性別に違和感があり、異なる性を生きたいと考えている人たちがいます。読者の中学生からLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に、性同一性障害を親に伝えたが受け入れてくれないという悩みが寄せられました。臨床心理士でスクールカウンセラーの大倉智徳さんにアドバイスをもらいました。
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【お悩み】性同一性障害を親が受け入れてくれない
僕は体が女性、心が男性で、この前病院で性同一性障害と診断されました。病院には親戚と一緒に行きました。診断書をもらい、学校に提出して、親にも伝えました。
ですが、親が性同一性障害であることを信じてくれません。このまま親へ伝える努力をし続けても無駄なのではないかと思い、諦めようか迷っています。僕はどうしたらいいでしょうか。(氷牙・中学2年女子(心は男子))
自分にとっての「安心」を求めよう
ご家族に自分のことを受け入れてもらえないということは、理由はどうあれつらいことだと思います。性同一性障害(いまは性別違和と言います)であることをすぐに信じてもらうのは難しいことかもしれませんが、諦めなくてもよいように思います。それではいま、どう考えられるといいのでしょうか。
第一に踏まえたいことは、自分自身を大切にし、無理をせず、日々の生活の中で自分にとっての安心を求めることです。恐らく日常生活や将来のことで、困っていることや迷うことがまだあると思います。
そう考えると、相談員の方、願わくは性的マイノリティーの支援も経験している方に継続的にサポートをしてもらいながら、自分はどうしたいのか、そのためにはどのように行動することがいいのかなど、自分自身の気持ちを一緒に整理していくことがいいのではないかと思います。
当事者の話を聞いてみよう
同じ経験をしている性的マイノリティーの方々の話を聞いてみることは、参考になると思います。自分だけが悩んでいるのではないことを実感できたり、友達や家族へどのように話をしたのか、日々感じるつらい出来事をどのように乗り越えてきたのかなど、当事者の方々から聞いたりすることはいい経験になると思います。講演会や交流会などに参加してみるのもいいのではないでしょうか。
交流会に参加する時に気を付けてほしいのは、「東京都総務局」などの公的な機関が主催しているものを必ず選ぶということです。10代でも安心して参加できることが多く、交流会の趣旨とは関係のない誘いを受ける心配がないので、私はお勧めしております。
受け入れられないのは心配の裏返し
性自認・性志向のことだけでなく、発達障害や心の病など、子どもが社会的なマイノリティーであることをご家族が受け入れることに時間がかかることは、決して珍しくはないと思います。差別を受けるのではないか、つらい思いをするのではないか、子どもの将来の安心を願うからこそ、感情的に反応することが多いように思います。そう考えると、焦らずに長い目で話し合う気持ちを持ってもいいのではないでしょうか。
まずは氷牙さんがいまの生活環境の中で、生き生きと楽しく生活できていること、自己実現に向けてがんばっていることが、結果的にご家族の安心につながり、理解につながる近道ではないかと思います。決して容易なことではないとは思いますが、自分自身の幸福と健康を第一に考えて行動することをお勧めしたいと思います。
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大倉智徳さん
おおくら・とものり 2002年からさまざまな公立高校でスクールカウンセラーを務める。現在は、小中学校などにも勤務
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