朝が起きられない、めまいや動悸がするなどの症状が出る「起立性調節障害」は、不登校の要因の一つとなっています。高校時代に発症し、全日制から通信制に転校した経験を持つ桜いをりさん(仮名、現在大学1年生)に、障害とどう向き合い、高校時代を過ごしたのか振り返ってもらいました。

「朝起きるのがつらい…」全日制から通信制へ

―高校進学後、最初はどんな学校に通っていましたか?

1年生のときは私立進学校の特進コースに通っていました。高校受験のときの第1志望校です。でも、夏休みに入ったあたりからだんだん朝起きるのがつらくなったんです。夏休みが明けてからは2週間に1回、1週間に1回と、休んだり早退したりする日が増えていきました。

高校のときに愛用していた勉強道具

―それはつらかったですね。原因は何だったのでしょうか。

起立性調節障害でした。朝起きられない、めまいがするなど、自律神経の病気です。学校を休みがちになってしまったので進級も危うかったのですが、私は学校に残りたい思いが強くて。担任の先生が計らってくれてどうにか2年生になれました。でも、2年生になっても朝から学校に行くのが難しくて、最初の中間テストすら受けられなかったんです。

―そこから通信制高校への転校を考え始めたんですね。

はい。いよいよ進級できないかもしれないと担任に言われて、6月ごろに転校を決意しました。

その時は夜も眠れない状況が続いていたんです。朝4時くらいまで起きてて、もう「心機一転転校しよう!」と、眠い目をこすりながら通信制高校の資料請求をしました。6月半ばからいくつか見学に行って、7月に転校しました。

「自分のペースで通えた」転校で体調回復

―転校して体調も回復したそうですね。

自分の体調と折り合いを付けながら、自分のペースで通えたのがよかったんだと思います。私が通っていた学校は最低登校しなければいけない回数が決まっていたのですが、週に1回、毎週行ければ確実に単位が取れるコースでした。朝、みんなと同じ時間に起きていく必要がないし、「今日も行けなかった」と落ち込むこともプレッシャーを感じることもなくなりました。

―転校前と後で、通信制高校のイメージは変わりましたか?

私自身偏見があったなと感じます。転校前は学力に自信のない子や、全日制高校に合わない子が行くイメージだったんです。でも、勉強以外にやりたいことがある子や、反対に勉強に集中したいから通信制高校に行く子がいると知りました。自分でその環境に入ってみないと分からないこともあるんだな、と感じました。

エッセーや小説を書くときにいつも使っているパソコン

―大学受験のサポートはありましたか?

私は総合型選抜で進学したので、受験準備は小論文の対策が主でした。もともと小説やエッセーを書いていたので文章を書くこと自体は得意だったのですが、学校の先生がマンツーマンで指導してくれることになって。小論文の書き方などを熱心に教えてくれました。

「全部自分で決めること」が大切

―高校生活を自分らしく送るために、大切なことは何だと思いますか?

全部自分で決めることだと思います。私は転校した時も、親から「転校したら?」と言われたことは全くなくて、「その学校にいたいなら好きなだけいたらいい」という風に言われていました。最終的に自分で通信制高校の資料を取り寄せて、説明会にも行って、自分で転校先を決めました。「100パーセント自分で決めた」と言える決断を重ねていくことが大事だと思います。