「学校の先生になりたい」という高校生の中には、長時間労働や部活の指導負担に不安を覚える人も多いはずだ。大阪教育大学理事・副学長の峯明秀先生に、教員になるまでの流れや、労働環境の改善の動きについて聞いた。(野口涼)

実習後に志望が変わってもOK

—教員を目指す高校生の中には、小中高どの学校の先生になるか、どの教科の先生になるか、迷っている人もたくさんいます。どの先生になりたいか、いつまでに決めればよいでしょうか?

多くの学生は、教育学部に入学した時点で決めている印象ですが、教育実習を終えると志望が変わることもあるようです。その場合も、新たに必要となった授業を履修することで、希望する免許を取得できます。複数の免許を取得する場合は、最終的には採用試験の願書を提出する段階で決めることになります。

—先生になるまでの流れを教えてください。

教員免許は卒業時に交付されますが、各都道府県の教員になるための「教員採用試験」はそれ以前、多くの自治体では4年次の6~7月頃に行われます。来年は5月ごろから始まる自治体もあるなど、早期化の動きが見られます。結果が出るのは9月の終わりころです。

先生になるまでの流れ

採用試験に不合格だった場合は、翌年再度挑戦することになります。しかし最近では教員が足りない状況もあり、合格して正規の教員になるまでに、非常勤講師として学校現場で経験を積むケースが多くなっています。あるいは専門性の高い教員を育てる「教職大学院」に進学し、チャンスを広げる学生もいます。300時間もの実習がある教職大学院では、理論と実践を往還しながら、教職のスキルをブラッシュアップできます。教職大学院での学びは、教員になった際の給与に反映されることもメリットです。

—教員にならない選択をした学生はどんなところに就職しますか?

塾や予備校の講師になったり、教育委員会の事務職など公務員として就職したりと、教員にならなくても大学で学んだ知識と経験を生かしています。なかには教育関連の会社を起業したり、教育関係のNPO法人を立ち上げたりする卒業生もいます。

労働環境の改善に動きあり

—教員の長時間労働が問題視されています。部活指導の負担など、「先生は大変だ」という話を聞くので心配だという教員志望の高校生もいます。改善に向けてどんな動きが取られていますか?

労働環境や給与などの改善が、現在急速に進められています。教員は残業代の代わりに基本給の4%が「教職調整額」として一律で支給されていますが、これを10%以上に引き上げる案が上がっています。

さらに部活動の指導はこれまで教員に「サービス」として求められていたものですから、社会全体に理解を求めると同時に、外部人材の登用が行われていくと思います。

一方で、福利厚生などの面では、教員は非常に安定した職業です。ぜひ知っておいていただけたらと思います。

—先生になりたい高校生にメッセージをお願いします。

高校時代は各教科の基礎学力を身につけると同時に、ボランティア活動や体験学習などに意欲的に参加してください。多様な人々とコミュニケーションがとれる教員、協働できる教員、新しい技術や概念を学び続けることができる教員にぜひなってほしいと願っています。

峯明秀(みね・あきひで)

大阪教育大学理事・副学長。香川県出身。1986年香川大学教育学部卒業。高松市の公立中学校社会科教員を経て2004年から大阪教育大学に教員として着任。中学校教員在職中の1991年に鳴門教育大学大学院で学び修士課程修了。復帰後、中央教育審議会教育課程部会教科別専門部会委員を務める。2010年に広島大学大学院博士後期課程修了。博士(教育学)。 2024年4月から現職。