あなたの周りに「病む」と言う友達はいませんか? 臨床心理士でスクールカウンセラーの大倉智徳さんに、読者の高校生からLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に寄せられた「『病む』と言う人への対処法が知りたい」という悩みに答えてもらいました。

【お悩み】「病む」友達へのベストな寄り添い方が知りたい

よく精神的な意味で「病む」人の話を聞きますが、私にはそれをしょっちゅう言う人の気持ちが分かりません。生きていく中でいちいち病んでもいられないと思うからです。加えて、私は病んでいる状態が認識できないほど鈍い、あるいは超ポジティブな性格なのか、自分で「病んでいる」と思ったのは小さい頃に家庭内環境が悪化したときだけです。

「病む」ってどんな状態?

本題は、病んでいる内容について相談されたときの対応に困っていることです。雑な相づちを打つのは失礼だし、できるだけ寄り添ってあげたいと思います。でも自分では分からない感覚の話なので、言葉掛けが難しいです。具体的な解決策を提案するのもなんだか違うような気がします。

「病む」と相談してきた相手に、どう対応するのがベストでしょうか。「病む」という状態はどんなもので、どういう場面でそうなるのかも知りたいです。(具牛・高校3年女子)

愚痴をこぼしストレス解消したい

私も「病む」という言葉を耳にしたことがあります。多くの場合は精神的な苦痛やストレスを表すのだと思いますが、何を苦痛だと感じるか、どの程度のストレスで「病む」を使うのかは人それぞれですので、どんな状態・場面でそうなるのかは私もよく分かりません。しかし、しょっちゅう言う人には、いくつか理由が考えられます。

一つは愚痴をこぼしたい気持ちです。自分の気持ちを口にすることで、心にたまったストレスを少しでも解消しようとしているのだと思います。人によっては、嫌な気持ちを黙っていると、よりストレスがたまりやすいこともあります。

愚痴をこぼすことでストレスを解消しているのかも

つらい状態を分かってほしい

もう一つは「病む」と言うことで、周りの人に自分がつらい状態であることを分かってほしい気持ちだと思います。これは「周りの注目をひきつけたい」「助けてもらいたい」気持ちにもつながると思います。

SNSや同年代の人が、「病む」という言葉を使っている影響もあるかもしれません。よく使われている言葉を口にすることで、気持ちを共有しやすく、友達からの共感が得やすいのではないかと思います。

関心を持って聞く態度をとる

では、もし相手から相談されたときは、どのように対応するとよいでしょうか。 相談を受けるとき、私が大切だと思うことは、相談相手の話にしっかり関心を持って話を聞くということです。

相手の話に「どんな状況なのだろう」「どんなことが言いたいのかな」「どんな気持ちでいるのだろう」という思いを持ち、それが分かるように話を聞くといいと思います。話の中で分からないところもあると思うので、「〇〇のこと、もう少し教えてくれる?」と質問してもいいでしょう。相手が相談してきている内容、相手がおかれた状況を、自分もなるべくはっきり想像できるように聞いていけるといいと思います。

言いたいことを要約してあげる

話を聞く中で、「いまの話は○○ということだよね?」と相手の話を要約して、自分が分かったことを伝えるのもいいと思います。それが相手の言いたいことだと、「そうなんだよ!」と相手からいい反応が返ってくることも多いです。

相手の話を要約すると◎

もしできれば、相手が話しやすいように配慮するといいですね。その時に避けたいのは、話のペースを気にせず相づちを打つこと、話の途中で質問をいろいろして話が滞ってしまうことなどです。

相談ごとを解決するよりも、まずは相手に「話ができてよかった」と感じてもらえる対応を目指していけるといいと思います。

大倉智徳さん

おおくら・とものり 2002年からさまざまな公立高校でスクールカウンセラーを務める。現在は、小中学校などにも勤務

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