ふくよかなおなかを出して、ハンバーガーを食べるセーラー服姿の女性。思わず二度見してしまうこの彫刻作品「初恋」は、第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の美術・工芸部門に出品されました。作者のグェン・ハイ・ダンさん(群馬・西邑楽(にしおうら)高校3年)に、作品に込めた思いを聞きました。

作品と並ぶグェン・ハイ・ダンさん

「50代ぽっちゃり女子の初恋」を表現

―作品のテーマを教えてください。

「50代後半ぽっちゃり系女子が初恋をする」という作品です。 若さを象徴するセーラー服と、50代後半ぽっちゃり系女子。物事はいつ始めても遅くないのか、彼女の視線の先には誰がいるのか……。太ったフォルムやボリュームのある作品を作りたいという思いと、「ザ・メニュー」という映画のラストシーンでハンバーガーを食べる場面が、この作品の発想につながりました。

―すごくインパクトがありますね。

作品の評価は見た人が決めることだと思うので、特に意味や強い思いを込めずに作りました。自分が面白いと思うものを作っています。見た人がそれぞれに何かを感じてもらえたらうれしいです。

獲物を狙う鋭い表情

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

獲物を狙う鋭い表情や、前のめりになっている体の動きにこだわりました。制服の質感やチラッと見える隙間、肉のボリューム感もポイントです。

顔のメイクは女子の友人にやってもらいました。着色は金色を下地にしてからそれぞれの色を塗ることで、元のプラスチックの素材感がわからないよう工夫しました。全体的にトーンを落とした色調ですが、リボンだけ鮮やかな色を入れてアクセントをつけています。

初恋(第47回全国高等学校総合文化祭 美術・工芸部門出品)

友人のツインテールやスカートを観察

―難しかった点や苦労した点はどこですか?

足の構造がわからなくて夜も眠れなかったです。いまだによくわからない部分です。時間の都合で、短い期間で型取りをしたのが大変でした。休日やゴールデンウィークをつぶして作業を進めました。石こうの型に補強の針金を入れる作業では、形が複雑だったので大量の針金を曲げるのに苦労しました。

―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?

ツインテールの髪型が分からなくて、友人に髪の毛を見せてもらいました。他にも、近くで制作している友人を見て、スカートのシワの表情や構造を観察しました。実物を観察することと協力してくれる友人の大切さを知りました。

―よい作品を作るためのコツや、上達のためにおすすめの練習方法はありますか?

映画や本などからインスピレーションを得ることがあるので、さまざまなメディアに触れることが大事だと思います。