食料や地球の環境について、課題を解決するための学びを行う農学部。学部卒業後は何割が進学し、卒業後はどんな分野に就職する学生が多いのだろうか? 北海道大学農学部長の野口伸先生に聞いた。(野口涼)

8割が修士課程に進学

―学部卒業後、何割の学生が修士課程・博士課程に進学しますか?

北海道大学の場合、修士課程に約8割、このうち博士課程には約1割の学生が進学しています。

―学部・修士・博士での学びの違いついて、北海道大学を例に教えてください。

学部では「講義を受ける」「実際に農作物を育てる」「高度な化学・生物実験やデータ取得の方法を習得する」「フィールドワークによって生態系を理解する」ことを通して農学の基礎を身につけ、最先端の科学・技術に幅広く触れていきます。4年次で研究室に所属し、指導教員の指導の下で卒業研究に取り組みます。

学部での学びを発展させて、それぞれの分野の専門家を目指すのが修士課程です。新たな科学的発見や技術開発を目指しながら、与えられた課題に取り組んでいきます。

研究者の養成を目的とする博士課程では、修士課程よりさらに高度な知識・スキルを身につけていきます。教員から自立し、自ら課題を見つけて研究を深めます。

取得できる資格は多岐に渡る

―取得できる資格の例を教えてください。

取得できる資格は多岐に渡ります。学科によって異なりますが、中学・高校の教員免許状のほか、食品衛生管理者、食品衛生監視員、家畜人工授精師、測量士補、樹木医補、自然再生士補、甲種危険物取扱者(受験資格)、森林情報士、学芸員などの資格が取得できます。

―どんな分野へ就職する学生が多いですか?

卒業生の多くは高度な専門人材として、JICAなどで海外での技術提供に関わる仕事に就いたり、製薬・食品会社の研究開発部門に勤務したりしています。例えば食品会社では、ヨーグルトやチーズといった乳製品をよりおいしくするため乳酸菌の研究をしている卒業生なんかがいます。農林水産省・環境省・国土交通省などの省庁や地方自治体で、農業政策の立案や農業技術の普及に携わる卒業生が多いことも特徴といえるでしょう。

野口伸(のぐち・のぼる)

北海道大学農学部長、農学研究院長。1985年北海道大学農学部農業工学科卒業、90年同大学大学院農学研究科博士後期課程修了。農学博士。97年北海道大学大学院農学研究科助教授、2004年教授、2023年4月から現職。研究分野は農業環境工学、農業情報工学。