「はい~」でおなじみ、テレビで見ない日がないほど大人気の芸人・やす子さんは、高校時代、どんな毎日を送っていたのでしょうか。部活にバイトに、全力を懸けた日々を振り返り、経験が今の自身にどうつながっていったのか、語ってもらいました。(文・本間美帆、写真・幡原裕治)

バイトと部活を両立、3年で90万貯金

──現在ではテレビで見ない日はないほど人気者のやす子さん。高校時代はどんな生徒でしたか?

暗すぎず明るすぎず、平凡な高校生でした。休み時間はとにかく読書をして、学校が終われば柔道部へ。部活動の後はとんかつ家さんでアルバイトをして、家に帰った後はヒップホップとかフォークロックの音楽を聴いて……。とにかく自分の好きなことをやっているタイプの人間でしたね。アルバイトでは高校3年間で90万円ためました。

やす子さん

辞めたかった柔道部で黒帯取得

──忙しい高校生活を過ごしていたのですね。柔道部での思い出を教えてください。

実は、部活動を当時は辞めたかったんですけれど、辞められず、ズルズルいってしまいましたね……。柔道部には部員が2人しかいなかったこともあって、練習も思うようにいかなかったんです。

でも、「やるからには頑張ろう」と続けていたら、部員が少なかったおかげで他の学校に練習に行くことができて、その分、ご縁や付き合いの幅が広がりました。黒帯も取ることができたんです。どんな環境でも、ある程度身を置いて流されてみるのも大事だなと思いました。

一方で、大人になってから 「自分の一瞬の勇気で、つらいことから解放されるんだ」って分かったので、いま部活動がイヤだなと思う人はやめたっていいと思います。

つらい時は休んでいい

──辞める選択も、続ける選択も、どちらにも肯定的な考えを持っていますが、どうしてですか?

高校3年生のときにちょっと心が疲れてしまって。学校をかなり休んでしまったんです。その経験から得たことは「休んだからって人生に影響はないので、心や身体がつらい人は気兼ねなく休んでいいんだ」ということです。

高校だから、もちろん出席日数も大事だとは思うんですけど。自分があのとき休んでよかったと思うのは、あのままヤダなと思いながら通い続けていたら、たぶんさらに心を壊してしまっていた気がするんです。なので、つらいときは、もう思いっきり休む。いまの時代オンラインで家でも勉強ができますし、フリースクールだってあるので。

元気いっぱい!

自分の機嫌を取る方法を知ろう

──なるほど、自身の経験から得た答えなのですね。他にも、つらいときや苦しいときのやす子さん流の乗り越え方があったら教えてください。

自分の好きなものや、自分の機嫌を取れるものを理解しておくことも大事ですかね。例えば自分の場合は、お風呂に入ったりとか好きな音楽を聴いたりとか、 自分の機嫌の取れるものが分かったおかげで、学校にもまた行き始めることができたのかなって思います。

あとは、もしもいじめで悩んで学校に行きたくない人がいたら「大人になれば一切学校と関わりはなくなるので、気にしなくていいよ」って伝えたいですね。そして、誰かに助けを求める。自分は高校時代、つらいときに周りの友達に悟られるのがイヤで言えなかったんです。でも保健室の先生にだけは言えたので、誰か一人でも吐き出せる人を見つけるのがいいと思います。

不安は紙に書き出してみる

──勇気を出して助けを求めたということですが、きっかけとなった出来事は何かありますか?

さっきお話したように、学校に行けなくなったときがありました。それは、高校生活の途中から勉強についていけなかったんですね。自分の分からないところが分からない、っていう状態で。さらに、分からないことを人に聞くことがちょっと恥ずかしかったんです。集団生活がしんどいなと感じることも原因でした。

そこで、不安に思っていることを紙に書き出してみました。箇条書きにしてみると「あれ。こんなに不安なのに、なんだか文字で見ると意外と大したことないな」って思って。

今度は「じゃあその不安に思っていること一つひとつを解決するには、どうすればいいかな?」って書いていきました。すると「じゃあわからないなら、もう先生に聞いてみよう」と解決策が見えてきたんです。

はじける笑顔 

―実際に行動に移しましたか?

はい。その後、思い切って先生に相談したら、すごく優しく教えてくださったんですよ。「自分にとっては恥ずかしいことかもしれないけど、相手は何も思っていない。不安やわからないことを人に聞くのはやっぱり大事だな」って、思いましたね。いったん箇条書きにしてみると、ただ漠然と不安だったことが、「あっ、意外とこんなもんか」って、気持ちがすごく楽になりました。

大人になってからも、書き出すようにしています。例えば、番組の収録でうまくいかなかったときに、落ち込んだりモヤモヤしたりするんですけど、紙に書き出すと意外と「思っていたよりもスベっていないな」とか「返しを間違えただけだ。トータルで見てみたら、できていることのほうが多いじゃん!」って、いまでも自身を見直すきっかけになっています。

大谷選手を真似してみた

──自身の弱点や強みをよく理解されている印象ですが、昔から自己理解が深いのでしょうか?

高校生時代に、野球選手の大谷翔平さんがやっていたというマンダラチャート(9×9マスのマス目で自己分析するシート)を書いてみたことがきっかけで、自分の欠点や長所が分かりました。紙に書き出し整理できたことで、自分を俯瞰(ふかん)して見ることができるようになったのかもしれません。いまも、テレビの仕事をするうえで、めちゃくちゃ遠くから客観的に自分を見ているかもしれないです。そうしないと視野が狭まっちゃうので。(続きます)
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やす子  1998年生まれ、山口県出身。17〜19年まで陸上自衛隊に勤務し、その後現所属事務所から芸人としてデビュー。現在も芸人と予備自衛官の二足のわらじで活躍中。バラエティー番組「ヒルナンデス!」「ぐるぐるナインティナイン ゴチになります!」(ともに日テレ系)にレギュラー出演のほか、雑誌『JUNON』でマンガを連載中。公式 X→@yasuko_sma

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高校生新聞は2023年10月1日に創刊30周年を迎えました。このインタビューは、過去30年に高校生だった人に高校時代の経験が今にどう生きているかを伝えるリレー連載です。