2017年に滋賀大学で国内初開設されたデータサイエンス学部。比較的新しい学問だが、どんなことに興味のある高校生が、データサイエンス学部に向いているのだろうか。椎名洋学部長に聞いた。(野口涼)

「学びたいことがない」人こそ来て

―どんな興味・関心を持っている高校生がデータサイエンス学部に向いていますか?

自分もそうでしたが、高校生では「学びたい」と思えることが見つかっていない人が圧倒的に多いはずです。ですから、「何も決まっていなかったらデータサイエンス学部に来なさい」と言いたい。人文、教育、経済・経営、物理、生物、化学……、ありとあらゆるタイプのデータを扱うのがデータサイエンスで、その中で自分が興味のある領域を見つけてもらえると思います。

データサイエンス学部は「学びたいことがない」人こそ向いている

―データサイエンス学部を目指す高校生が身につけておいたほうがよいことはありますか?

強いていえば「情報」の授業はしっかり勉強しておくといいかなと思います。でもそれをしなかったからといって不利になることはありません。

文系でも問題なし

—文系の高校生がデータサイエンス学部で学ぶことは難しいのでしょうか。

データサイエンスは、基礎となる「情報」と「統計」に数学を使うので理系だと思われがちです。滋賀大学の場合も、3対1くらいの割合で理系の学生が多い。ですが「情報」や「統計」において数学は所詮(しょせん)「道具」ですから、深いレベルまで理解する必要はありません。滋賀大学のカリキュラムも、文系、理系の枠組みにとらわれない融合型のカリキュラムとなっています。

何か新しいサービスを生み出そうとするときには、「人は何を欲しているのか」「どう行動したがっているのか」という「人間そのものに対する興味」が必要です。ですから、「どう問題を解決するか」「どんな新しいサービスを生むか」といった「価値創造」については、むしろ文系の人のほうが有利な部分もあるのではないでしょうか。

データサイエンスは文理融合の学問。文系の高校生にもぜひ目を向けてほしいと願っています。

椎名洋(しいな・よう)

1986年東京大学法学部卒業、92年同大学経済学研究科博士課程単位取得満期退学。経済学博士。信州大学経法学部教授を経て、2020年から滋賀大学データサイエンス学部教授。研究分野は多変量解析、情報幾何、統計的決定理論。