全国の大学で新設が相次ぐデータサイエンス学部。卒業後はどんな分野に就職する学生が多いのだろうか。滋賀大学データサイエンス学部で学部長を務める椎名洋先生に、進学、就職状況について聞いた。(野口涼)

あらゆる分野で求められる

—何割の学生が修士課程に進学しますか。

滋賀大学のデータサイエンス学部では、学部の卒業生の約2割が修士課程に進みます。そのほとんどがより高度なスキルを身につけるための進学で、修士課程修了後には民間企業に就職します。修士課程の2年間で学べることは非常に多く、学部卒で就職する場合に比べて即戦力として、企業からの期待も大きいのです。

—どんな資格が取得できますか。

滋賀大学では既定の単位を取得すれば社会調査士を取得できるほか、情報処理技術者試験や統計検定の合格を目指すカリキュラムを提供しています。学部卒業時には統計検定2級や情報処理技術者試験に合格するレベルには十分に達しています。他大学では、情報の教員資格を取得できるところもあります。

そもそもデータサイエンスはこれからの社会に必須の学問。データサイエンスを学んだ学生は、大手・中小を問わず、あらゆる企業から今後ますます必要とされるようになるでしょう。政府は2019年に「データサイエンス・AIを理解し、各専門分野で応用できる人材を年間約25万人育成する」という目標を掲げました。ICT(情報通信技術)の活用が一気に広がる、今はまさに歴史的な転換期なのです。

就職の幅が広がる

—どんな分野に就職する学生が多いですか。

滋賀大学のデータサイエンス学部は2017年4月に開設し、今年の3月に4期生が卒業を迎えます。1期生と3期生の就職状況を比べると、1期生の約5割は「情報通信業」、いわゆるIT系の企業に就職したのに対し、3期生では約3割に減少。その分、製造業や卸売り・小売業など、幅広い業種に就職するようになりました。

活用の場が広がるデータサイエンス

ここ数年でIT部門を内製化する(会社のなかにIT部門をつくる)企業が急増したのが理由です。データサイエンティストの活躍の場はIT系企業だけでなく、あらゆる業界・企業へと広がりつつあるのです。データサイエンティストはあらゆる分野で求められており、資格に頼らなくても就職に困ることはありません。

椎名洋(しいな・よう)

1986年東京大学法学部卒業、92年同大学経済学研究科博士課程単位取得満期退学。経済学博士。信州大学経法学部教授を経て、2020年から滋賀大学データサイエンス学部教授。研究分野は多変量解析、情報幾何、統計的決定理論。