頭の中でうごめくのは、ちょうやカブトムシ、てんとう虫といったさまざまな虫たち。インパクトの強いこの作品は、第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の美術・工芸部門に出品されました。制作者の島田愛子さん(岡山・岡山操山高校3年)に、作品に込めた思いを聞きました。
「虫は私にとってオアシス」
―作品のテーマや込めた思いを教えてください。
私の脳内は宝石のように美しい虫でいっぱいだということを表現するために、脳みその中が虫になっている私の顔を描きました。虫は私にとってオアシスだということを表現するため、周りを砂漠にしています。
絵の中で、虫は私自身を表すモチーフでもあります。虫は、人からの評価が極端な生き物。ある人からはひどく嫌われ、ある人からは狂気的に愛されたりします。私は両親から「お前はそういうタイプだ」と言われたことがあり、私と虫には共通点があると感じています。
登下校の最中に美しい虫を見つけたら、生きていても死んでいても、家まで連れ帰って飼ったり保管したりしています。私の虫コレクションは私にとって宝石箱のようなものです。
「気持ち悪い」で終わらせない
―こだわったり工夫したりしたポイントは?
「虫を強調するために、私の顔は必要最低限描けばよい」と判断し、砂漠の真ん中に埋めました。多くの人にとって虫は気持ち悪いものかもしれませんが、わざわざ虫を描く必要性を感じ取れる絵にするには、虫がただの虫でありながら、絵の中で一番のテーマである「自分」を象徴する存在でもある必要があります。虫を「気持ち悪い」だけで終わらせないために、虫をメインに置き、絶対に必要で意味のある「象徴」として扱うことにしました。
―難しかった点や苦労した点はどこですか?
自分の背丈ほどもないキャンバスの中にどうやって奥行きを出し、迫力のある絵にするかが考えどころでした。遠くにあるものを青みを強く描くことで奥行きを表現する「空気遠近法」を使うことにし、奥の砂漠を青色で描いて広大な砂の世界を表現しました。
ただ、この絵を描くのは「楽しかった」という記憶が占めています。正直「苦労した」記憶はほぼありません。
虫を見ながら「のびのび描けた」
―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?
私の世界観が独特なのもあるのか、先生からの修正の指示などが一切なく、本当にのびのびと描けました。ただ、部屋を閉め切って、拾い集めたときの状態のままの虫の死骸を見ながら描いていたので、独特の甘い腐臭と床に敷いたダンボールの匂いと油のきつい匂いで体調を崩しました。
―よい作品を作るためのコツや上達方法を教えてください。
資料をよく見て描けばいいと思います。描きたいものの決め方は人それぞれですが、私は寝ている間見たような気がするものをぼんやり思い出して、その意味を考察しながら描いたりしています。