「パソコンの設定ができない」「家電製品の取扱説明書がWEB掲載で確認できない」。坂尻蒔穂さん(福岡・福岡大学附属若葉高校1年)は、高齢者の困りごとを学生がサポートするアプリを考案した。(文・写真 中田宗孝)

学生が高齢者を手助けするアプリ

スマホやロボット掃除機などの家電、デジタル機器などの設定や操作が苦手な高齢者は多い。そこで坂尻さんは、デジタルに詳しい大学生や専門学生たちが高齢者の元へと赴き問題を解決する、高齢者と学生のマッチングサービスのビジネスを考えた。「小さなヘルプ(help)を大きなハッピー(happy)に変える!」という思いを込めて、ビジネス名を「HelPy(ヘルピー)」と命名し、起業に向けて取り組んでいる。

機器の使い方が分からず困る高齢者とデジタルに詳しい学生とのマッチングサービス「HelPy」のビジネスモデル

1回1000円でサポート

公民館の掲示板やパンフレットなどでサービスに興味を持った高齢者が、まずは「HelPy」主催のワークショップに参加する。一方、高齢者のサポート業務をする学生たちは、依頼者が暮らす地域から選ばれる。「スマホの基本的な操作は分かっていても、アプリのインストールができない高齢者もいます。ワークショップでは、学生がアプリのインストールをサポートします」

「HelPy」のアプリの依頼画面は、各アイコンも大きく、簡単に操作できる仕様だ

これでアプリの登録が完了し、スマホから依頼ができるようになる。パソコンの設定や買い物同行などのサポートを完了すると業務達成。依頼料は1回1000円。運営手数料の10%を差し引いた900円分の電子マネーが学生の報酬となる。

煮詰まったら「一人壁打ち」

スマホの設定が難しくロボット掃除機の購入を断念した祖母の実体験がきっかけで、中2のころから「HelPy」のプランを思案し続けていた。自分の考えが煮詰まったときには「一人壁打ち」をしたという。

「企業の方に『壁打ちが効果的』とアドバイスをいただき実践しました。例えば『私にはこんなビジネスのアイデアがあります』『じゃあ何でそのビジネスがしたいの?』なんて自問自答。それを繰り返しながら考えを整理、ブラッシュアップしていきました」

実際に、中学のころは依頼の申し込み方法を手紙や電話対応で考えていたが、高校生になり、スマホから簡単に依頼できるようにビジネスモデルをブラッシュアップさせた。

高校在学中の起業が目標

高校生が考えたビジネスの内容を競う「第11回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)のファイナリストの一人に選ばれ、1月には壇上でプレゼン、優秀賞を獲得した。

壇上でプレゼンする坂尻さんのジャケットには、「HelPy」のマスコットキャラクター「ピーちゃん」の缶バッジが。祖母の飼うセキセイインコがモデルという

発表を終え、今後の課題は「HelPy」で働く学生の採用基準の改良だと話す。「高齢者の方が安心して困りごとを依頼できる人材確保をどうするか考えていきます」

「ビジネスを考えるのは楽しい!」と笑みを浮かべる。「私の思い描いたビジネスを事業化できたとき、世の中がどう変わっていくのか。それを知りたいし、想像を膨らませているのも楽しいんです」。高校在学中に「HelPy」を起業するのが当面の目標だ。