自宅以外で勉強したくても、自習場所が見つからない。札幌日本大学高校(北海道)の1年生3人はそんな悩みを解消するアプリを考案した。一体どんな仕組みなのか聞いた。(文・写真 中田宗孝)

自習できる勉強場所をアプリで表示

札幌日本大学高校の1年生グループは、昨年7月から高校生に向けた自習場所の探索アプリ「シェアスタディ」を開発してきた。アプリ内の地図を表示すると、周辺の図書館や喫茶店といった「自習可能なスポット」が簡単に確認できる。

「ほぼ空席」だと緑色、「ほぼ満席」は赤色の表示があわせて付いていて、4つの色別で混雑状況もリアルタイムで分かる

シェアスタディに掲載された自習スポットは、同アプリを利用する高校生ユーザーからのリアルタイム投稿によって、混雑状況も知ることができるという。「混み具合が分かれば『せっかく行ったけど席が空いてなかった』なんて状況を事前に防げます」(松本勇紀さん)

生徒85%が「自宅外で自習」

3人は、中高一貫校で中学生のころから校内外で自主勉強に一緒に励んできた「自習仲間」だ。「僕は、人の移動が多少あって視覚的にザワついている環境が理想の自習空間です。イヤホンをしながら勉強するので雑音は気にならない」(松本さん)

左から松浦さん、松本さん、三戸さん。彼らは中学のころから切磋琢磨してきた自習仲間だ

一方、三戸優和さんは、家の近所に最適な自習スペースがないのが悩みだと話す。「郊外に住んでいます。下のきょうだいもいるので家の中が常ににぎやか。静かな環境で集中して勉強できる場所を探しています」

約300人の高校生に校内アンケートを実施したところ、約85%が自宅以外の場所で自習していた。「みんな自習できる場所を求めている。私たちが開発を進めるアプリには需要があると感じました」(三戸さん)

ポイント制で投稿促進

高校生が投稿する自習スポットの情報は、シェアスタディ運営側が各施設の管理責任者に掲載許可を得たうえで、アプリ上に反映される。多くの自習場所を掲載するためには、高校生からの情報提供やユーザー獲得が肝になってくる。

そこで導入したのが「ポイント制」だ。おすすめの自習スポットを投稿すると「ディスカバリーポイント」が、自習場所の少ない地域の情報を投稿すれば「ボーナスポイント」が得られる。「『ポケモンGO』などのスマホ向け位置情報ゲームアプリのように、自習できる場所を、街中を歩き回って楽しみながら探してもらえる。このゲーム性で多くのユーザーを獲得します!」(松本さん)

勉強できるスポットを探したり、ユーザー自らがおすすめの自習場所を紹介したりもできる

さらにシェアスタディを起動しながら自習すると、勉強時間に応じて「スタディポイント」も得られる。ポイントをためると、飲食店でドリンク無料サービスなどが受けられる仕組みだ。

地域のお店に集客の効果も

自習スポットは、地域密着型の個人店舗を想定。「お客さんをたくさん呼びたいけど、宣伝費にまで資金を回せない。シェアスタディは、そんな個人店に高校生たちを誘導できるアプリでもあります」(三戸さん)

アプリ上に表示する学習塾のバナー広告や、高校生世代の行動データを必要とする企業に情報を販売することにより利益を上げる計画だ。「企業側に販売するのは、もちろん各ユーザーの個人情報を除いた高校生の行動範囲や趣向などです」(松浦凌真さん)

1月、取り組みの成果を「第11回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)の最終審査会で発表、優秀賞を受賞した。今後の課題は、アプリの開発費用の捻出だという。「僕らが一番解決したかったのは『自習場所が見つからない』こと。これはクリアできると思うんですが、ビジネス面においては、初期費用をどう捻出するかを考えなくてはなりません。それがビジネスの面白さでもあります」(松浦さん)