東京大学(五神真総長)と日本サッカー協会(JFA・田嶋幸三会長)は12月16日、スポーツ医学・科学研究などに関する連携協定を結んだ。トップアスリートとトップ研究者の異色の連携により、競技力向上などを狙う。
東大が競技団体と連携協定を結ぶことも、JFAが研究目的で大学と連携することも初めて。連携のきっかけは、田嶋会長と東大の境田正樹理事がスポーツ庁の審議会で共に委員として同席したこと。「スポーツ界と大学が組むことが重要」という二人の考えが一致し、協定締結に発展したという。
連携内容は、サッカー界のアスリートと東大の研究者の協力によるスポーツ医学・科学研究の推進、研究成果を生かした競技力向上、地域貢献、健康増進などを想定している。境田理事によれば、人工知能(AI)を駆使したアスリート強化や拡張現実(AR)を活用したトレーニング方法の開発などを視野に入れる。
田嶋会長は「私たちは常に世界基準を意識している。東大は世界でもトップレベルの大学だ。スポーツ医科学は直接、選手の育成につながる。(理系の研究だけでなく)社会科学にも期待できる。日本にもっとサッカーが広げるには、少子化の中で子どもたちがどうサッカーに取り組んでいくかなど、社会科学の面でもご協力いただけたら。日本だけでなく世界のスポーツ界を変える研究になるよう、本気でやりたい」と意気込む。
五神総長も「連携には、文系・理系を越えて『オール東大』で取り組む。トップアスリートは高い感性を持っている。トップサイエンティストとコラボレーションすることで、研究は圧倒的なスピードで進む」と力を込める。トップアスリートの身体機能を分析することは一般の人たちの健康寿命を延ばす研究にも役立つという。
東大側は今年5月に立ち上げた「スポーツ先端科学研究拠点」が今回の連携を担当する。同拠点には文系・理系を超えた50以上の研究室が参加しており、幅広い分野の研究者がJFAとの連携に参加することになりそうだ。東大ア式蹴球部(サッカー部)の学生にも研究に協力してもらい、部の強化も狙う。他の競技団体とも連携の検討が進んでいるという。