高校教育の「新課程」に対応した2025年度入試は何が変わるのか。大学入学共通テストへの「情報」の導入や全教科を通じて必要な対策、個別試験での「数学」の出題範囲の変更の影響などについて、河合塾教育研究開発本部で主席研究員を務める近藤治さんに聞いた。(西健太郎)

国立大の96%が「情報Ⅰ」必須、公立大は45%、私立大は3%

2025年度からの大学入学共通テストの大きな変更は教科「情報」の導入だ。国立大学協会は各大学で「情報」を課すことを申し合わせており、河合塾の集計によると、国立大学の一般選抜の募集区分のうち96%で「情報Ⅰ」を必須とする。

このため、国立大学の81%が6教科8科目を課す入試となる(地歴と公民は1教科扱い)。一方、公立大学で必須とするのは45%にとどまり、6教科8科目を課すのは22%だ。私立大学入試の「共通テスト方式」で必須とするのは3%にすぎない。

国公立大の共通テスト 2025年度入試からの「情報Ⅰ」設定状況(河合塾提供、2023年10月末現在)

「情報Ⅰ」は国立大の配点の数%「個別対策により力さいて」

河合塾の近藤さんは国立大学志望者も「情報」の対策を過度に気にする必要はないと助言する。配点が限定的だからだ。国公立大学志願者が共通テストで6教科8科目を受験した場合の配点でみれば「情報Ⅰ」は1000点満点中10%にあたる100点だが、大学ごとに選抜に利用する配点は変更できる。河合塾の集計によれば、「情報Ⅰ」の結果を点数化して選抜に利用する大学のうち配点比率が10%の大学は33%で、配点比率10%未満の大学が59%に上る。

さらに、個別試験の配点も含めた総合点で占める「情報Ⅰ」の比率は、「難関大学であれば1~2%程度」という。近藤さんは「報道では『情報』が始まるので受験生は大変だと強調されがちですが、総合点に占めるウエートはこの程度です。0点では困るけれど100点満点をとる必要もない。それよりは個別試験の対策に力を入れたほうがよいでしょう」と話す。

共通テスト「情報Ⅰ」を点数化する国公立大の配点比率(河合塾提供、2023年10月末現在)

新課程は数学の範囲が変更、個別試験で新範囲が出るのは26年以降か

新課程では、数学の出題範囲が変わることも注意する必要がある。大学によって個別試験の数学の出題範囲として指定する科目が異なるほか、「数学B」と「数学C」を指定する大学でも、一部の範囲のみ指定することには注意が必要だ。ただ、2025年度入試に限っては、個別試験で新課程独自の範囲からの出題はあまりみられないだろうと近藤さんは予測する。「浪人生向けの選択問題を出すのは出題の労力がかかり、技術的に難しい。浪人生にも配慮した共通問題が出題されるでしょう」。一方、現高校1年生が受ける26年度以降は新課程ならではの出題が予想されるという。

国公立大2次試験「数学B・C」の出題範囲(河合塾提供、2023年10月末現在)
私立大独自試験「数学」の出題範囲(河合塾提供、2023年10月末現在)

共通テストは「速読力」が必要、本や新聞を読むのがオススメ

共通テスト全体にいえるのは、読み解く文章量の多さだ。「どの教科でも複数の資料を読み解いたり、対話文を読んだりして、答える設問が多い。日本語を読み解く『速読力』が必要です」。高校1・2年生のうちから、教科の学習以外に、「日ごろから本や新聞を読んでおくとよい」と助言する。