有名な浮世絵「富嶽三十六景」をモチーフにした作品。よく見ると、細かなプラスチックなどの「海洋ゴミ」でできています。制作者の杉山愛桜(あいら)さん(静岡・焼津中央高校3年)に、作品に込めた思いを聞きました。(写真・学校提供)

令和の富嶽三十六景(第47回全国高校総合文化祭 美術・工芸部門出展)

海洋ゴミで「富嶽三十六景」を制作

―作品に込めた思いを教えてください。

テーマは「SDGsを身近に」です。私は近隣の浜に遊びにいったときに、砂浜にプラスチックゴミが散乱していたのを見たことをきっかけに、探究活動を行ってきました。

海浜・海中清掃をして拾ったガラスやライター、プラスチックを砕き、UVレジンの中に封入してキーホルダーやアクセサリーを作り、地元の商業施設「焼津さかなセンター」や焼津商店街の祭りで販売したことがあります。その時、SDGsという言葉や海洋プラスチック問題を身近に感じていない人が多くいました。

「海浜プラスチックゴミ問題が身近にあることを伝えたい」思いが強くなり、この作品を作りました。ところどころ貝殻なども貼ってあり、自然の中に海洋ゴミが共存していることも表しています。

作品の総重量は5.5kg

―こだわったり工夫したりしたポイントを教えてください。

この作品には主に3つのポイントがあります。

1つ目は背景のモザイクです。テレビの砂嵐をまねし、環境が破壊されつつあることを暗示しています。

2つ目は富士山です。赤富士にすることで富士山(=自然)が環境破壊の影響を受けて怒っていることを表現しました。

3つ目はプラスチックで作られた立体の海です。2050年までに、海中のプラスチックの重量は魚の重量を超えると予測されています。プラスチックの海は、その現状を表現しました。

作品と並ぶ杉山愛桜さん

―難しかった点、苦労した点は?

ゴミをアートにするために洗ったり、砕いたりしたことです。この作品は総重量5.5kgあり、全て海浜で拾ったプラスチックやライター、缶などを使用しています。4カ月間あった制作期間のうち、半分以上の期間をゴミを洗ったり小さく砕いたりすることに使いました。

特に、波の高さ出しで使った200個以上のペットボトルキャップを中まできれいにたわしで洗う作業では、忍耐力がつきました。

「神は細部に宿る」を意識

―制作中の印象的なエピソードはありますか?

放課後の美術室が思い出に残っています。この作品を作っている期間、夜まで美術室に残っているときもありました。部活動時間が終わって誰もいない美術室では、吹奏楽部が練習している音や、サッカー部や野球部の声が聞こえました。そんな音を聞きながらの作業はとても静かで、不思議な気持ちになりました。

電気のついていない廊下を歩いてげた箱に行ったり、コンビニに寄って温かい肉まんを食べたりしながら帰ったこともあります。とても充実していました。

―この作品は第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の美術・工芸部門に出展されました。よい作品を作るためのコツ、上達のためにおすすめの練習方法を教えてください。

細かいところを丁寧に作業することだと思います。私は、今回の作品で特に背景のモザイクに時間をかけました。制作するとき、「神は細部に宿る」という言葉を気にかけています。この過程が、他の作品にないオーラや雰囲気を醸し出せると思います。