気づいたら部屋が散らかっている……。田中ニコさん(茨城・古河中等教育学校5年=高校2年)はそんな状態を解消できる片付け習慣化アプリ「Casisu(カシス)」を開発した。いったいどんなアプリなのか、詳細や開発に至るまでの思いを聞いた。(文・野口涼、写真・学校提供)

片づけをしてポイント獲得

田中さんが開発したアプリ「Casisu(カシス)」は、片付けが苦手な人のために開発された、部屋をきれいに保つためのアプリだ。

青い範囲(片付けたい場所)のきれい度をAIがチェック。写真では95パーセントと計測された

アプリには「部屋のチェック機能」が搭載されている。片付けたい場所をカメラで撮影すると、AIがその場所に置いてあるものを検出し、「きれい度」を計測。ユーザーは「きれい度」を計測したり、実際に片付けを行ったりすることで、ポイントを獲得できる。

実は田中さん自身、片付けが大の苦手だ。「これまでさまざまな習慣化アプリを使ってきましたが、やったことを記録するだけにとどまっているものがほとんど。行動を起こすための『強制力』が弱いと感じていました」

そこで考えたのが、獲得したポイントで植物を育てる仕組みだ。片付けの頻度を週1、週に複数回、毎日のいずれかで設定し、設定した日数通りに片づけをするとポイントを獲得できる。「ポイント=植物にあげる水のようなもので、片付けをしないと植物は枯れてしまいます。『花を咲かせたい、枯らしたくない』という心理を使った『強制力』で、片付けの習慣化が図れると考えました」

4カ月かけて作成

「きれい度」の判定には、二つのAI機能を用いた。

ポイントがたまると成長するが、ポイント0の期間が続くと枯れてしまう

一つ目はカメラをかざすと画面上に写るモノを認識する「物体検出AI」。二つ目はAR機能を実装するために現実世界の床や壁などを認識する「平面検出AI」だ。この二つを組み合わせて、独自の「部屋チェックAI」を開発した。

「二つのAIの組み合わせを考え、実装するまでが『Casisu』の開発でもっとも大変だったところです。コンピュータ・ソフトウェアに関する技術情報サイト『Qiita』などを見たり、さまざまな方にアドバイスをもらったりして、どうにか納得できる機能と精度を実現しました」

「生活に役立つもの」を作りたい

中学時代に茨城県が主催するプログラミング授業に参加したことで、「もともと興味のあったプログラミングがより好きになった」という。現在は民間のオンラインスクールを受講しながらプログラミングに取り組んでいる。

「最初はゲームを作っていたのですが、プレイする側としてはそこまで『ガチ勢』ではないため、どうしたらユーザーを楽しませることができるのかよく分からない。自分には『生活に役立つこと』を目的としたスマホアプリの方が向いているのではないかと思い、『Casisu』の開発を始めました」

改良進めリリース目指す

Casisuの開発にかかった期間は約4カ月。中高生がアプリ開発を行い、企画力や技術力を競う「アプリ甲子園2023」(ライフイズテック、丸井グループ主催)のエントリー締め切りに向けて、夏休みのほぼすべてを費やした。結果は見事「技術賞」を受賞。「優勝を狙っていたのでちょっと悔しくはありましたが、一番苦労した点を評価していただけました」

現在は、撮影した写真をもとに「片づける場所」を提案する機能の追加や、ポイントがもらえる条件の追加によって片づけをより手軽にすることに取り組んでいる。改良が終わり次第、App Storeで配信する予定だ。

「App Storeでの配信に向けて絶賛改良中です」と田中さん

プロジェクションマッピングなどの開発にも興味があり、電子工作も始めたという田中さん。「将来は、デジタルを通してリアルの世界とより深く関われるようなシステムを作りたい」と夢を語った。