自然界の謎を解明する理学部。一部では「理学部の就職は不利」とささやかれることもあるが、理学部の卒業生はさまざまな場所で活躍している。東北大学理学研究科長・理学部長の都築暢夫先生に、理学部の進学・就職事情を聞いた。(野口涼)
東北大は8割が修士課程に進む
—修士課程、博士課程には何割程度の学生が進学するのでしょうか。
東北大学の理学部では約80%の学生が大学院の修士課程に進学します。学生は所属する研究室の研究グループの一員として、卒業研究で培った知識やスキルを使い、研究の一端を担っていきます。
さらに博士課程に進学するのは、修士課程を修了した学生の30〜40%です。独立した研究者を目指す博士課程では、教員とコミュニケーションを取りながら自らの計画に基づいて研究を進めていくことになります。
国際学会で発表できる
—修士課程、博士課程に進むと、国際的な舞台で発表する機会はありますか?
東北大学の場合、ほとんどの博士課程の学生は在学中に一度は国際学会などで研究成果を発表しています。海外の大学と連携して教育研究を行うプログラムがあり、そこでも発表する機会があります。
—発表時に必要なことは何でしょうか。
「自分の研究成果を人に伝えたい」という気持ちが何よりも重要です。もちろん英語力も必要ですが、教員がサポートしますし、英語によるコミュニケーション能力の向上は多くの大学で取り組んでいると思います。
民間企業の技術者になる学生が多い
—どのような分野に就職される方が多いのでしょうか。
学部卒の場合は、情報系や製造業に就職する学生が多いです。修士を修了するとより研究開発者として就職する人が多く、中には教員や官庁に勤める人もいます。博士では大学などの研究者になる人がいる一方、企業の研究開発職に就く人も半分以上に上ります。
理学部の学びは社会で応用できる
—理学部ではどのような資格が取得できますか?
数学と理科の教員免許が取得できます。多くの大学では、学芸員の資格も得られます。
大学のカリキュラムとは直接関係はありませんが、理学の多くの分野で数学や統計学が非常によく使われることから、アクチュアリー(保険数理や年金数理を担う専門家)の資格取得にも有利です。数学科などでは在学中に資格試験の一部に合格する学生もいて、卒業後は保険や年金の分野で活躍しています。
—一部では、「理学部に進学すると就職先に困る」というイメージを持つ人もいると聞きます。
確かに、卒業後の進路がイメージしにくいというのはあるかもしれません。しかし実際には理学部や大学院で身につけた知識と実践力には応用性があり、卒業生はさまざまな分野で活躍しています。大学などの研究職だけでなく、民間企業で研究開発に携わる卒業生が多いです。(参考:https://www.sci.tohoku.ac.jp/juken/after-graduation.html)
都築暢夫(つづき・のぶお)
宮城県仙台第二高校卒業。1992年9月東京大学大学院数理科学研究科第一種博士課程中退。1996年3月博士号取得(数理科学)。広島大学大学院理学研究科教授を経て、2008年4月より東北大学大学院理学研究科教授。専門は整数論・数論幾何学。2023年4月より現職。