目を大きくしたり、肌をきれいにしたり……スマートフォンで写真を撮るとき、特に10代の中では加工アプリを使うことは今や当たり前になった。そんな中、一部の高校生では加工ができないSNS「BeReal(ビーリアル)」が話題になっている。(椎木里咲、登場する高校生は全員仮名)

写真加工ができないアプリ

BeRealは2020年にフランスで生まれたSNSだ。1日1回ランダムな時間に、撮影を促す通知が届き、アプリを開いてから2分以内に外カメラ、内カメラの両方で同時に写真を撮影する。撮影した写真をBeRealのアプリにアップし、自身の許可したユーザー同士のみの間でシェアをする仕組みだ。アプリを開いてから2分以上が経っても投稿自体はできるが、その場合は投稿画面に「〇分遅れ」と表示される。

BeRealのトップ画面

BeReal最大の特徴の一つが、「写真の加工ができない」ことだ。インスタグラムに搭載されているフィルター機能や写真加工アプリの「美肌」機能を始めとする加工ツールは、BeRealには搭載されていない。友達との写真や目の前に広がる風景など、あくまでも「ありのままの今」を撮影し、友人間でシェアするのである。

仲良しの友達と「ありのまま」を共有

加工ができない、いうなれば「盛れない」アプリのBeReal。高校生はどうやって使っているのだろうか。

3年生のアカネさんはほとんど毎日BeRealを投稿している。クラスメイトの約半数がBeRealユーザーで、「通知が来るとクラスが『来たよ!』盛り上がります(笑)」。アカネさん自身がつながっているのは6人だ。「なんでも話せる関係の子たち。毎日一緒にお弁当を食べる、いわゆる『いつメン』です。BeRealの投稿を見て『昨日こんな投稿してたね』って、会話のネタにすることもあります」(アカネさん) 

アカネさんのBeRealの投稿画面。外カメラ、内カメラの両方で同時に撮影した写真をアップする

一方、2年生のカエデさんは「周りに友達がいたり、目の前にきれいな景色が広がっていたり……自分が上げたいな、と感じた時だけ投稿しています」と話す。つながっているのは8人で、アカネさんと同じく心を許せる友人たちだけだという。

そんなカエデさんのこだわりは、必ず「一発撮り」で投稿すること。「撮り直すと、投稿画面に撮り直した回数が表示されます。自分が写りにこだわっていることを知られたくないし、『ナチュラルに撮ったらこんなにいい感じに撮れたよ』という姿勢でいたいんです(笑)」(カエデさん)

二人ともBeRealでは仲の良い友達としかつながっていないため、無加工の写真を投稿することに抵抗もないという。「中学生の時に写真アプリでネズミの耳が付くフィルターがはやったのですが、もはや加工され過ぎてて原型が無かったんです。高校に入るとノーマルカメラで撮ることも増えたので、『ありのまま』を映すことに価値が高まってきているのかも」(カエデさん)

インスタは「加工します」

二人に最も使うアプリを尋ねると、「インスタグラム」と声を揃える。「写真を投稿する」という点では似ている二つのアプリだが、高校生にとってどんな違いがあるのだろう。

「BeRealはスマホの内側のカメラ、外側のカメラで同時に撮影するので、インスタと比べて『今』感が強いんです。インスタは24時間で投稿が消える『ストーリー』は上げるけど、投稿はほとんどしないです」(カエデさん)

「BeRealはアプリ内にカレンダーがあって、投稿した日に印が付くんです。『この日にこんなころ上げてたな』って思い出を振り返れるのが魅力。個人的には、インスタのストーリーよりも気軽にアップできます」(アカネさん)

投稿した日が一目で分かる

そんなアカネさんは、インスタグラムに写真をアップするときは、肌をきれいにするなど写っている人の顔を加工するという。「インスタはBeRealと違ってたくさんの人とつながっているので、写っている子に不快な思いをさせないために加工をしてから投稿します」

「加工ができないアプリ」のBeRealが流行しているからといって、高校生の中で加工文化そのものが廃れたわけではない。BeRealでは無加工、インスタグラムでは加工というように、場所ごとにコミュニティを使い分けているのだ。

訂正:タイトルに誤字があったため訂正しました。(2024.1.4 14:00)