コロナ禍やAI技術の発展など、時代が目まぐるしく変化している。法学部での学びは、どのように変わっていっているのだろうか。早稲田大学法学学術院長・法学部長の田村達久先生に聞いた。(野口涼)

新しい法制度の更新が加速

―コロナ禍やAI技術の発展など、社会が激変しています。そんな中で、法学部の学びはどう変化していきますか?

感染症の拡大や大地震の発生などを大きく「災害」と捉え、それらのリスクに対して法律ができることを考える研究が進んでいます。新しい法制度ができたり、更新されたりすることも多く、法学部の学びのなかで存在感を増してきました。さらに文理の壁を越えた、新しい法学教育が進んできています。

ネット空間の問題を法学から考える

―早稲田大学ではインターネット上の仮想空間「メタバース」を授業に取り入れましたね。法学部の学びの変化を示す、特徴的な取り組みです。

はい。今年の秋学期には、あいおいニッセイ同和損保が協力する寄付講座として「メタバースと法」という授業を設けました。担当教員と受講生が全員、ネット上の分身である「アバター」となって、メタバース空間で授業を展開しています。

メタバースはエンタメやショッピングをはじめ、多岐にわたる分野で活用が期待されています。アバターに着せる服、靴などのアイテムを購入する取引なども活発です。一方で、アバター間での迷惑行為などの多数の課題があるのも事実です。授業では現実空間に存在するルールがメタバース空間でどこまで適用されるのか、などについて考察しています。

―昨年4月からは「先端科学技術と法コース」がスタートしました。

ビッグデータや遺伝子工学、AIなど、科学技術の発展が著しい今の社会は、法律の役割が改めて問われています。こうした変化を背景にして、新しくコースを設けることになりました。例えば、AIが社会実装される上でどんな問題を持つのか、問題が起きないようにどんな仕組みを作るべきなのかを研究しています。

「先端科学技術と法コース」の授業(早稲田大学提供)

社会を見る目を研ぎ澄ます

―時代の変化とともに、さらに法学の必要性の高まりがうかがえます。あらためて田村先生が思う法学部で学ぶ魅力はなんでしょうか。

自分の興味・関心に応じた研究領域が必ず見つかることです。法律学というのは、世の中で起きているいろいろなことにアプローチできます。学ぶ中で、社会を見る目がより確かなものになっていく……社会に出るときには、どんな分野でも活躍できる力を身につけられることが魅力だと思います。

田村達久(たむら・たつひさ) 早稲田大学法学部卒業。同大学大学院法学研究科公法学専攻修士課程修了。博士後期課程単位取得退学。専門は公法学。2022年9月より現職。