法学部に進学するのは法曹希望者だけ? 実際はそんなことはなく、官公庁や民間企業に就職する学生も多い。大学院への進学状況や就職の実態を、早稲田大学法学学術院長・法学部長の田村達久先生に聞いた。(野口涼)
大学院は2種類ある
―大学院へ進学する学生はどのくらいいますか?
進学を希望する学生は、「法曹を目指す学生」と「法学研究者を目指す学生」の2種類に分かれます。
法曹を目指す学生が進学するのは法科大学院、いわゆるロースクールです。早稲田大学では「法務研究科」という名前ですね。司法試験は、法科大学院を修了するか「予備試験」に合格しなければ受験できませんでしたが、今年の試験から法科大学院でも必要な単位を取得した人の在学中の受験も認められました。早稲田大学以外のロースクールへの進学者を含めると毎年、全体の約1割が進学しています。
なお、現在、「法曹コース」が設置されている法学部では、主要な法律科目について集中的かつ高度な授業を行うことで法務研究科との連携を図っています。
一方、法学研究者を目指す学生は「法学研究科」に進学します。年度によって変わりますが、早稲田大学の法学研究科を含めて卒業生の1割程度が進学しています。
法曹以外の就職も有利
―裁判官、検察官、弁護士などの法曹を目指していない高校生も、法学部に入学してもよいのでしょうか?
法曹になるための勉強を効果的に、そして最短の時間で行おうと思うなら法学部に入学すべきです。しかし、だからといってそうでない学生にとって法学部での学びが意味を持たないかといえば全くそんなことはありません。
法律というのは、社会のあらゆる領域に関係するものなので、多種多様に制定されています。なので世の中のさまざまな問題に関心がある人にとって、「法律学が面白くない」ということは無いと思うのです。身の回りのことを法律を通して考えることで、自分の適性・興味を見つけられるのです。
法的素養を身につけることは一般企業においても非常に有利になります。法学部というのは、むしろ将来どういった道に進みたいのか決まっていない高校生にとっても、極めて有効な進学先だと考えています。
ちなみに早稲田大学の場合、法曹の道に進むのは2割ほど。このあたりの割合は大学によって異なっています。
法学部の学びは公務員試験に直結
―法学部の学生はどんな業界に就職するのでしょうか。
年によって変動しますが、法曹を目指してロースクールに進学したり、進学や資格勉強に励んだりする学生が2割、国や地方の公務員になるのが2割、研究者を目指して大学院に進むのが1割、残り5割の学生が法律の専門職(税理士、公認会計士、社会保険労務士、行政書士など)に就いたり、一般企業に就職したりしています。一般企業の内訳は近年だと金融、コンサルティングなどの専門サービス、メーカーの割合が多くなっています。
―「公務員試験に有利」と聞いたことがありますが、本当ですか?
公務員試験では、法律系の専門科目としてほとんどの職種で憲法・民法・行政法が出題され、法学部で学ぶ内容と直結しているのが有利といわれる理由だと思います。早稲田大学の場合も公務員志望者は多く、国・地方の一般行政職に進むのは就職を考えている学生のうち、毎年1~2割程度に上ります。