「このメールを10人に送らないと不幸が訪れる」。人々の不安を誘ったりだましたりする内容を拡散するように煽り、不特定多数に拡散させるチェーンメール。そんなチェーンメールは今、「チェーンLINE」へと姿を変えて中高生の間で出回っている。(椎木里咲)
LINEに届いた1通のメッセージ
今年5月、高校生新聞のLINEアカウントに読者からこんなメッセージが届いた。
「このメールが来たらあなたは50時間以内に20人に送ってください。さもなくば、50時間後にあなたの家に来て首を切り落とし指を1本ずつ抜きます」。さらにこのメッセージには「メールを回さなかったがために被害に遭った」とされる人物の名前や、電話番号らしき数字が記載されていた。
このメッセージを送った中高生と見られる読者は、メッセージ送信後に高校生新聞のLINEアカウントをブロックしていた。
「送らなければ不幸になる」
こうした「チェーンメール」ならぬ「チェーンLINE」について、太郎さん(仮名、高校2年)は、中学時代に体験した恐怖を鮮明に覚えているという。まだスマホを使いたての頃、小学生時代の友達から、唐突にLINEが送られてきた。
「この文をコピーして変更せずに10分以内に5人に送信してください。送らなければこの先の人生は不幸になり、二度と幸せが訪れることはありません。本当です、嘘だと思うのであればこの番号に電話してください」
恐怖を感じた太郎さんは、出会ったばかりの友達5人にLINEを転送した。「あとから調べて知ったのですが、そこに書いてあった電話番号は暴力団につながる番号でした。送ってしまった友達には、あとで『ごめんね』と謝りました」
8割以上がチェーンLINE経験あり
チェーンLINEの実態を知るため、6月にLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」をフォローしてくれている中高生のうち255人にアンケートを行った。すると82%が、チェーンLINEを受け取ったことがあると回答した。
「チェーンLINEを受け取ったことがある」と答えた人に、受け取ったLINEをどうしたか聞いた。一番多かったのは「放置した」で84%、次に多かったのは「破棄した」で24%おり、多くの人はチェーンLINEには特に対応していなかった。一方で「友達に送った」と答えた人が21%おり、5人に1人はチェーンLINEを拡散してしまうことが分かった。
回答者のうち7人に「実際に送られてきたチェーンLINE」の内容を見せてもらうと、すべて「このメッセージを●人に送らなければ不幸になる」という内容のもので、かつて流行した「不幸の手紙」と同じように、中高生の不安につけ込んだメッセージが出回っていた。
LINE社はSNSで注意喚起
10代を困惑させるチェーンLINEが出回っていることを、LINE社(現LINEヤフー)は把握しているのだろうか。広報担当者に聞くと、「チェーンLINEが出回っていること自体は把握しているが、どんな内容のチェーンLINEが出回っているかは把握できない」という。
日本では法律によって「通信の秘密」を保護することが定められている。そのため「LINE」アプリ上でユーザーがやり取りしているメッセージの内容は、社内では原則確認することができない。企業や個人から「こんな内容のチェーンLINEが出回っている」と報告があったものについては、公式X(旧Twitter) で注意喚起を行っているという。
チェーンLINEは「法の対象外」
チェーンLINEは、法律で規制することはできるのだろうか。総務省の担当者に聞くと、「チェーンメールを含めた迷惑メールを規制する法律『特定電子メール法』はあるが、その法律でLINEを取り締まることはできない」という。LINEはいわゆるEメールやSMSといった「特定電子メール法」が定める電子メールに該当しないため、この法の適用外となるという。
チェーンLINEそのものを規制することはできないが、総務省では小学生から高校生に向けた情報リテラシー講座を行ったり、インターネットトラブルの事例をまとめたりしてフェイクニュースやデマの拡散を防止する啓発活動を行っている。
紹介したチェーンLINEに記載されている内容はまったくのデマであり、「拡散しなければ不幸になる」ことはない。届いたときには情報を精査し、安易に拡散しないことが大切だ。
編集部にあなたの声を聞かせてください
チェーンLINEの現状について、あなたはどう思いましたか? 記事を読んで感じたことやあなたの意見を、LINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に送ってください。
メッセージの最初に学年・性別(さしつかえなければ)・ペンネーム(アカウント名は掲載しません)を明記してください。