「この勉強、将来の役に立つ?」と考えたことのある中高生は少なくないのではないでしょうか。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者から寄せられた「勉強をする意味がわからない」というお悩み相談に答えてもらいました。

【お悩み】勉強をする意味がわからない

今している勉強が将来の役に立つとは思えず、なんのために勉強をしなければいけないのか理解できませんし、やる気が出ません。

人生に必要なことだけ学びたい

人生において必要な事柄のみ、しっかり学びたいです。例えば、高校で学ぶ内容は、義務教育でないためなくても生きてはいけます。一般教養なのであれば、理科は基礎までで十分すぎるくらいで、応用はその道に進む人のみでよいのではないかと思います。

今の勉強が将来の役に立つと思えない…(写真はイメージ)

歴史のテスト、いる?

漢文や古文は日常で全く使わないため、その内容を伝えたいのであれば現代語訳のみ聞いておけばよくて、わざわざ解読する必要はないと感じます。歴史も過去の事実を教えてもらうのみにとどめて、テストで試さなくてもよいのではないでしょうか。

でも受験はしないと…

その分、日本人が苦手とする英語にもっと力を入れてほしいです。このようなことを考えるときりがなくなり、本当に勉強している自分や、他の高校生があわれに思えてきます。

もちろん、モチベーションもないけれど、大学には行かなければいけません。そのためには受験があるので、勉強が必要になります。

こんな風に考えてしまうのですが、どうすればいいでしょうか?(バジル・高1女子)

勉強の本来の目的を知らない

こんにちは。石田勝紀です。すばらしい視点です。多くの人が心にモヤモヤを抱えながらも、言語化せず、仕方ないからやる、皆がやるからやるという中で、バジルさんは明確な問題意識として明文化していることはとてもすばらしいと思います。

バジルさんのように高校の勉強に意味を感じない中で大学受験の勉強をする生徒は少なくありません。古文の解読や、理科の応用など、そのような問題をやることを不要と感じながらも受験の合格のために勉強すると考えている高校生がかなりの数を占めると思います。

「合格さえできればいい」勉強はもったいない(写真はイメージ)

「かなりの数を占める」とは言ったものの、それは本来のあるべき状態であるとは限りません。どういうことかというと、高校生には表面的な部分だけを見て勉強する人と、深い部分まで見て勉強する人の2つのタイプがいます。

後者が本来の勉強の目的なのですが、残念ながら、指導者含め、生徒もごく一部しか本来の目的を知りません。ですから、高校の勉強なんてやらなくていい、生きていく上で不要という考えを持つ人や、入試で合格さえできればいいと考えを持ってしまう人が多数出てきてしまうのです。もったいないことです。

目的は「思考力」アップ

バジルさんの言われる「理科は基礎までで応用は必要ない」は正しいとは思いますが、実は応用によって脳のある部位が活発化し、思考力が高まります。つまり、理科的素養の獲得よりも、思考そのものがアップグレードするということです。それをたまたま理科の応用問題を使ってやっているということです。

勉強をすると思考力が身につく

「漢文や古文は日常で全く使わないため、その内容を伝えたいのであれば現代語訳のみ聞いておけばよくて、わざわざ解読する必要はない」というのも、最もな意見です。しかし、これを学びにつなげる人は、解読作業によって思考力が深まることを知っています。思考力が深まると、これからの人生で問題、課題に直面したときに脳が動き出すのです。古文や漢文の知識や内容だけではなく、思考力そのものが役立つということです。

理科には理科的思考力が、古文漢文には文学的分析的思考力として、実は日常の多くの場面で役立つことが知られています。科目が異なると脳の異なる部位が活性化するため多様な思考力がつくということです。

「人生に役立つ」勉強をしてる?

「歴史も過去の事実を教えてもらうのみにとどめて、テストで試さなくてもよいのではないでしょうか」の部分ですが、確かにテストのために歴史を勉強することは本来の歴史の勉強ではないかもしれません。

しかしこれも、単純に知識をテストのために丸暗記する人と、歴史的事実を有機的につなげて理解して覚える人の二種類に分かれます。前者は「歴史の知識を覚えても意味ない」と言い、後者は「そこで得た因果関係や有機的構造がその後の人生で役立つ」と言います。テストがなくてもつくかもしれませんが、テストがあればそれに向けて学ぶので思考力を上げる機会として利用できると考えているのです。

英語は不要になる可能性も

逆に英語に至っては、英語を必要とする仕事につかない限りは、人生において今後全く使わないかもしれません。最近は翻訳アプリもあるので、ますます不要になるかもしれません。(もちろん英語も英語文化圏の思考や文章構造の展開など思考力は高まるため意味はあります)

以上、一言で語れば「思考の型を作るために学びがある」と考えてみてはどうでしょうか。意味がないと思えば無駄な作業となり、意味があると思えば学びにつながるということです。以上参考になれば幸いです。

 
石田勝紀さん 
いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば
』(集英社)など著書多数

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