大学受験では自分の学びたい学部に向けて勉強することが第一だが、入試の動向や変更の情報をおさえて志望学部や受験する入試の選択肢も増やしておきたい。2017年度入試の志願状況を河合塾の集計・分析をもとに振り返った。

「文高理低」に変化、学部ごとに差

国公立理系は情報・建築が人気

17年度入試では、どんな分野が人気だったのか。国公立大について、定員の多くを占める前期日程入試をみると、全体の志願者数は昨年とほぼ同じ。その中で「法・政治」「経済・経営・商」という社会科学系の学部系統が志願者を増やした。

理系は、「工」学系が志願者を増やした。工学の中でも「通信情報」「建築」といった分野が人気という。これに対して、「理」「農」学系は志願者を減らした。近年、文系の人気から「文高理低」とも言われたが、文系・理系のそれぞれの中で学部系統により志願者の人気が分かれた格好だ。

国立大の教育学部独自の「総合科学課程(教員養成を主目的としない課程)」は廃止が相次ぐ。関連して全学的な学部再編や定員変更がされるケースがある。

私立大延べ志願者が増加 学内併願制度が影響

私立大(一般方式)の志願者数をみると、延べ志願者数が昨年より1割近く増えた。河合塾の分析によると、インターネット出願の拡大や、一度の試験で複数学部・学科を出願したり、複数方式の出願で受験料を割り引いたりする制度により、一人当たりの出願数が増加しているという。とりわけ「社会・国際」「経済・経営・商」系統が大きく増やしている。

東工大の志願者増 ノーベル賞効果か

難関国立大の志願者をみると、前期日程で東京工業大、一橋大の増加が目立つ。東工大は第7類「生命理工学類」の増加が目立っており、大隅良典栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞も一因とみられるという。後期日程は推薦・AO入試の導入に伴う廃止や縮小が目立つ中で後期入試を続ける一橋大が志願者を増やした。

国公私立を問わず、新学部・学科の設置や入試改革が進んでいる。また、今年志願者が多い学部が来年も同じ傾向とは限らない。河合塾教育情報部部長の富沢弘和さんは「学部・学科研究や新しい入試を研究することで視野が広がり、受験の選択肢も増える。受験生は、自分が学びたいことを第一の基準にして、目標を下げずに勉強を頑張ってほしい」と話す。