懐中電灯の上に水の入ったペットボトルを乗せると、光が広がり「ランタン」のような役割を果たす。液体の種類やペットボトルの形によってランタンの光り方は変わるのか? 研究を進め、3月に行われた「関東近県SSH指定校合同研究発表会」で発表を行った橋野藍里さん、野口花鈴さん(ともに東京・中央大学附属高校3年)に話を聞いた。(写真・椎木里咲)

液体の種類によって光の強さは変わる?

―研究内容を教えてください。

野口さん 私たちは「ペットボトル製即席ランタン」について約半年間研究を行いました。ペットボトル製即席ランタンとは、懐中電灯などの光源の上に水の入ったペットボトルを乗せると、中で光が拡散されて周囲を広く照らすことができるというテクニックです。最近では、災害時に簡単に明かりを確保できる方法として知られています。

研究を行った橋野藍里さん(左)と野口花鈴さん

―停電時でも周囲を明るく照らせるんですね。どうやって研究を進めましたか?

野口さん ペットボトルの中身や形が周囲の明るさに与える影響について研究しました。実験では暗室に即席ランタンを置き、そこから20センチメートル離れたところの明るさを照度計で測定しました。

ペットボトルの中身には水、牛乳、カルピス、アクエリアス、りんごジュースという5種類の液体を用意。それらを500ミリリットル、1リットル、2リットルという形状の異なる3種類のペットボトルと組み合わせて、どの組み合わせが周囲を明るく照らすか調べました。実験の結果、1リットルペットボトルとアクエリアスの組み合わせが最も明るいことがわかりました。

そして、水のような透明度の高い液体や牛乳のような不透明な液体よりも、アクエリアスのような半透明のものが明るいという結果になりました。

きっかけは「名探偵コナン」

―実験を始めたきっかけを教えてください。

野口さん 「名探偵コナン」で、ペットボトル製即席ランタンの水の中に牛乳を入れて、周りが明るく照らされたシーンを見たことがきっかけです。日本は災害が多い国なので、災害に対する備えを日頃から行うことが大切だと思い、災害時により明るく過ごす方法としてペットボトル製即席ランタンの研究を始めました。

アクエリアスが入ったペットボトル。実験室に目張りをし、暗闇を作って実験(本人提供)

―研究を進める中で苦労したことはありますか?

橋野さん 実験を行うための暗所を確保することです。実験室に目張りをして照度計の測定値が0ルクスを示すように工夫しましたが、秋ごろになって日が低くなると夕方の西日が教室に差し込み完全な暗所にすることはかなり難しかったです。

災害に対する意識が高まった

―今後の課題を教えてください。

野口さん より明るいランタンを作る方法を見つけることです。今回はペットボトルの下に光源を置いていたため、光源からの光がペットボトル上部に集中してしまい、光を十分に利用できていない可能性があります。例えばキャップの裏にアルミホイルなどの光を反射する素材を挟めば、そこで反射した光がペットボトルの中部や下部でも拡散してより明るいランタンになると考えています。

「関東近県SSH指定校合同研究発表会」で使用したポスター

橋野さん 今回の実験では市販の液体をそのまま使用しましたが、今後は液体の濃度を変えたり内容物の種類を増やしたりして、液体の成分と明るさの関係をより詳しく調べたいです。半透明の液体がより明るく光るという結果だったので、どの程度の透明度の成分がよいのかを調査したいと考えています。

―研究を通して、身についたものはありますか?

橋野さん この研究に取り組んだことで、自分自身の災害に対する意識が変わったと感じています。停電などの非常事態では即席ランタンの存在を思い出し、積極的に動くことを心がけます。身近な親族や友人にも共有して、明かりがないことで災害時の行動範囲が狭まらないようにこの研究を広めていきます。