俳優の窪田正孝さんが青春を過ごしたのは工業高校。仲間たちと鉄の加工技術を高めた日々を懐かしむ。出演する痛快アクション映画「ヒーローマニア─生活─」では、見事な体当たり演技を披露した。俳優として活躍する今でも、ゼロからカタチにしていく〝モノづくり〟の現場で輝いている。(文・中田宗孝、写真・玉井幹郎)

高校では金属加工に熱中

乗り物の整備士を目指すため、機械科のある工業高校に通っていた。授業では、特殊な機械を使って金属などを加工する「旋盤実習」に熱心に取り組んでいたという。

「真ちゅう(銅と亜鉛の合金)を加工して文鎮を作りました。金属を1ミリ単位で削る細かい作業の連続で大変でしたが、クラスメートと教え合いながら技術力を磨くのが楽しかった」

その後、高校在学中に母親の勧めから俳優の道へ進む。志が変わっても「〝モノづくり〟に携わるということでは、整備士も役者も同じなんです」と話す。

「監督が練ったアイデアを具現化するのが役者の仕事。僕はゼロからカタチにしていく〝モノづくり〟がたまらなく好き。だから今、とても充実しています」

気づくと自分の世界に…

4人の変わり者がヒーローとなる映画「ヒーローマニア─生活─」で、偶然にも自分と同じ工業高校出身の土志田(としだ)を好演。役柄との共通点はほかにもある。

「人見知りな性格が似てます。あと、人と話していても知らず知らずに自分だけの世界に入ってしまい、気がつくと会話がズレていくところとか(苦笑)」

劇中、手に汗握る格闘シーンをはじめ、体を張った演技に数多く挑戦している。

「高台から側転で地面に着地する初体験のアクション演技もありました。求められた動きはかなりハードですが、監督の期待には、必ず応えたいんです!」

落ち込むこともあっていい

俳優の仕事が好き。「でも時々、自分の演技がうまくいかずに、悩んだり嫌になったりする瞬間はある」。それでも、自分の好きなことを続ける大切さを高校生たちには伝えたい。

「落ち込んでもいいし無理をしなくてもいい。一番大事なのは、好きなら絶対に諦めないで続けていくこと。そして、好きなことに夢中になる自分を見てくれる人が誰か一人いれば、励みになりますよ」

くぼた・まさたか
1988年8月6日、神奈川県生まれ。2006年に俳優デビュー。以後、映画・ドラマへ精力的に出演を重ねる。主な出演作はドラマ「デスノート」「MARS〜ただ、君を愛してる〜」など。出演映画「HiGH&LOW THE MOVIE」が7月16日に公開。

「ヒーローマニア─生活─」(配給:東映・日活)
 無気力コンビニ店員の中津(東出昌大)。彼はある日、身体能力抜群の土志田(窪田正孝)、情報収集力の高いカオリ(小松菜奈)、カナヅチを武器に使う日下(片岡鶴太郎)と出会い、4人で自警団を結成する。そして、街の治安を人知れず守るのだが……。新宿バルト9ほか全国劇場で公開中。