通学中や空いた時間でビジネスができたら……。早稲田大学高等学院(東京)の2年生2人は、駅から駅までの移動しながら荷物をデリバリーするビジネス「ナガデリ」を考案した。移動時間を使って収入を得られるこのビジネスは、一体どんな仕組みなのか。考案した2人に話を聞いた。(文・写真 中田宗孝)
高校生が通学しながらデリバリー
通勤や通学のため、近隣する県から東京へ移動する人は一日約300万人だと言われている。早稲田大学高等学院の近藤汰津樹さん、堀井惟吹さんは、この人の移動と物流を掛け合わせた新たな配送ビジネスを考えた。「通学や空いた時間を使い“なが”ら荷物を“デリ”バリーする配送システムが『ナガデリ』です」(近藤さん)
首都圏の高校生が主力となる配送員を担う。高校生が普段どおりに通学しながら収入を得られるのが、大きな魅力の一つだ。
文具や書籍など小さい配送物に限定
横浜駅(自宅最寄り駅)から渋谷駅(学校最寄り駅)まで電車通学する「ナガデリ配達員」の高校生を仮定して、業務内容を紹介しよう。
まずは配達員が移動経路を専用アプリに入力。その情報をもとに大手運輸会社によって、横浜駅周辺に設置した専用の宅配BOXに渋谷まで運んで欲しい荷物が輸送される。
「高校生が配達する品物は、文房具や書籍といったリュックに入るモノに限定します。ワレモノや高額商品、運送技術が必要な大型の品物は、これまで通り、大手運輸会社が担当することで業務のすみ分けもできると考えます」(堀井さん)
配送業界の人手不足改善したい
配送当日、専用の宅配BOXから荷物を受け取った配達員の高校生が通学のかたわら、渋谷駅周辺に設置した専用の宅配BOXに荷物を預ければ業務は完了。荷物の届け先までは再び大手運輸会社が行い、配送済みになると「ナガデリ」配達員に配送手数料を入金する流れだ。
若い世代を積極的に参加させ、ネット通販の利用者が増えたことによる宅配の需要に反して、人手不足に陥る運送業界の現状を改善する狙いもあるという。
高校在学中の起業に奮闘中
1月、高校生たちがビジネスのアイデアを競う第10回高校生ビジネスプラン・グランプリ(日本政策金融公庫主催)の最終審査会で、ビジネスモデルを発表した。
起業家を目指す2人は、高校在学中の起業を試みているが、未成年ゆえの壁に阻まれてきたと話す。「未成年が法人化するには必要な手続きが多く、ハードルが高いんです。通販事業を思いついても、販売サイトにセラーとして登録できません」(堀井さん)
そんな体験から、「ナガデリ配達員」の高校生は、個人事業主として業務委託契約を交わす構想だという。「アルバイト契約ではなく個人事業主になることで、高校生にもビジネスへの責任を感じてほしい。そして未成年の起業がもっと活発になればいいなと思っています。僕自身、絶対に『ナガデリ』を実現化させたいです!」(近藤さん)