本嶋向日葵さん(東京・晴海総合高校3年)は、発展途上国で暮らす主婦たちに個人商店を開業させる支援ビジネスを考え、昨年からフィリピンで実際に個人店舗の運営を始めた。この試みは高く評価され、今年1月、高校生が考えたビジネスの内容を競う「第10回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)でグランプリを受賞した。(文・写真 中田宗孝)

貧困に苦しむ発展途上国の主婦を救え

本嶋さんが考えたのは、発展途上国に暮らす主に主婦層の女性の生活水準を向上させるビジネスプラン「冷蔵庫プロジェクトJAPAN」だ。貧困地域で生活する主婦たちに、日本側から冷蔵庫と少額の資金を貸与し、小規模ストアの開業・運営をサポートする。

本嶋さんの運営店舗ではないが、彼女が現地で撮影して、参考にしたフィリピンの一般的なサリサリストアの様子(本嶋さん提供)

ビジネスの展開先はフィリピン。日用雑貨品やお菓子を販売する「サリサリストア」と呼ばれる個人商店があちこちに存在している。わずかな資本金で開業でき、自宅の玄関先で始められる点にも着目した。

「フィリピンの貧困層の主婦は子育てに追われ、外に働きに出ることができないのが実情。夫の収入のみに頼り、1カ月約3万円の苦しい生活をしているため、進学をあきらめる子供も大勢います。この負のスパイラルを私の考えたビジネスで変えたいと思いました」

フィリピンの貧困身近に感じ

本嶋さんは日本人とフィリピン人の間に生まれ、4歳までフィリピンで過ごした。日本で暮らすようになってからも二度留学している。「幼いころからフィリピンの貧困を身近に感じてきたんです」

ビジネスプランを発表する本嶋さん

昨年4月、本嶋さんはフィリピンのマニラ首都圏で実際に小規模ストアをオープンさせた。「ビジネスを順立てして計画するのに苦手意識があり、それなら“行動してみよう”と。実証店舗を運営しながら色々考えていくほうが、私には合っていました」

お年玉で開業資金捻出

店舗で実務を担当する人材は、2020年~21年前半にかけてフィリピン留学した際に自ら声を掛けた、現地の主婦。商品を保管する冷蔵庫や開業資金はお年玉から捻出した。「年間を通じて暖かいフィリピンではジュースがよく売れ、利益率も高い。なので、ドリンク販売中心の店舗にしました」

商品の管理、経理、販売戦略の提案といった店舗運営は、従業員とのオンライン会議でやりとりを交わしている。フィリピンの小規模ストアで日常的に行われる“ツケ払い”での決算を容認するなど、経営者として柔軟に対応した。

年上のフィリピン人の従業員とのコミュニケーションにも気を配ったと話す。「フィリピンでは年下が目上の方にお金の話をするのはよくないといわれています。フィリピン出身の母に相談しながら、失礼のない伝え方を心掛けています」

開業した店舗は現在、月額3万円の目標利益を設定し、60~70%の売上を達成しているという。

フランチャイズ展開を目指して

今年1月、「第10回高校生ビジネスプラン・グランプリ」で、全国455校4996件の応募の中からグランプリに輝いた。審査員たちからは、「まさに『BOP(bottom/base  of  the[economic]pyramid)ビジネス』、世界の貧困問題を解決できるプラン」と、海外に目を向けてビジネスを実践する彼女の行動力が高く評価された。

高校卒業後は大学へ進学し、大学在学中にフィリピンへの留学を予定している。「留学後、人材確保や販路を確立させ、将来的な目標のフランチャイズ展開を目指していきたい」