柴田一洋さん(大阪・成城高校2年)の写真作品「老いた日のこと」を紹介します。祖母の目から見える世界を収めたこの作品は、第46回全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)の写真部門で奨励賞を受賞しました。どのように撮影したのか聞きました。

老いた日のこと(第46回全国高等学校総合文化祭 写真部門 奨励賞)

美しい「祖母の世界」を伝えたくて

―作品のテーマと、そのテーマを選んだ理由を教えてください。

僕の祖母はコロナ禍の中で、足を骨折して入院しました。半年ほどの入院生活の中で、祖母に会えたのはたった数回。戻ってきた日の祖母の顔は僕たちを見ておらず、どこか遠くを眺めていました。

それから1~2カ月したある日、祖母は歩行トレーニングの一環として窓際まで器具を使ってゆっくりと歩いていました。隣に据えつけられたソファに掛けて、いつの間にか手に持ったミカンを傍に置きながら、あの日と同じように外の世界を、どこか遠くを眺めていました。

祖母の見ている世界、その周りの空間そのものが、一人の人間の人生として美しく感じられました。そこから、祖母が見ている世界、祖母が考えている世界、祖母が感じている世界が気になって……。僕が感じた祖母の世界を、皆さんに伝えたくて制作しました。

―こだわったり工夫したりしたポイントは?

できるだけ作品を見た人それぞれが感情を揺さぶられるような、それぞれにとっての物語があるような作品に仕上げたいと思っていました。光や影を考えて、窓からの夕日の景色や、考えさせるような雰囲気を作ろうと思ったりして撮影しました。

その作業中、祖母が感じている世界はどんなものだろうか、などを考えて、自分の考えている作品はどんなものなんだろうと振り返りを何度も行っていました。

「よぉ撮れてるねぇ」家族も喜び

―難しかった点、苦労した点は?

普段撮影をするときは祖母に許可をもらって撮影しているのですが、良い構図を狙って撮ろうと思ってもなかなか撮れず、時間をかけてしまって祖母に迷惑をかけてしまったな、と反省しています。普段祖母の介護をしている最中に「おっ、いいな」と思っても、カメラの用意ができていないがために撮れない、ということも多々ありました。

―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?

祖母に完成した作品を見せたところ、「よぉ撮れてるねぇ」と言ってもらいました。その後に「私もモデルになればよかったかしら」と冗談交じりで言っていたのがとても印象に残っています。

写真活動を始めたのは高校に入ってからなのですが、入部した当時はそこまで口を出さなかった母がこの作品を見せた後に褒めてくれました。「新しいカメラ買うべきちゃう?」とか「写真も頑張ってみたら?」とか、入部した当時よりも写真部について話すようになりました。

―よい作品を作るためのコツ、上達のためにおすすめの練習方法を教えてください。

高校生から始めたので、あまりコツなどは熟知していません。ただ、先生方からは「気になったらとにかく最低5枚撮れ、それも構図を使いまわすんじゃなく、いろんな画角、縦撮り横撮りをやってみて次を撮る」と指導を受けました。