生理にまつわる悩みは、周囲の人にはなかなか相談しにくいもの。でも、不安があるときは一人で抱え込まないことが大切です。思春期外来を担当する産婦人科医の「サッコ先生」こと高橋幸子先生に、読者からの質問に答えてもらいました。(安永美穂)

ピル処方は医師の診察を受けて

高校生からの質問です。「低用量ピルはどこで売っているのですか? 親にバレずに、高校生でも買えるのでしょうか」

日本では、低用量ピルの市販薬はなく、婦人科か産婦人科で受診して処方してもらう必要があります。医師の診察を受けずに購入できるネット通販で扱われている海外製のピルには、安全性を確認できないものも多く、購入はおすすめできません。

低用量ピルの服用は受診が必要(写真はイメージ)

初診からオンライン診療が受けられる医療機関もありますが、低用量ピルの処方にあたっては本人の体質や家族の既往歴などをよく確認する必要があります。できれば最初の1回は医療機関を受診して、対面で医師の診察を受けてほしいと思います。慣れてきたらオンライン診療で処方してもらってもOKです。

低用量ピルを購入方法まとめ

◯病院で対面診療で処方してもらう

◯病院でオンライン診療で処方してもらう

×ネット販売で購入する

費用は月1000円程度、保護者の理解を得よう

保護者の方と一緒に受診してもらえると、医師から保護者の方に直接、ピルのメリット・デメリットや効能などを説明できます。「親にバレたら反対されそう」と感じても、個人的には、「自分の体を大切にするためにピルを使いたい」というあなたの気持ちと正しい知識が保護者の方に伝われば、理解してもらえるケースも多いように思います。

保護者と受診して、低用量ピルの説明を受ける(写真はイメージ)

ピルの費用は、避妊目的なら自費診療扱いとなるため1ヶ月あたり2,500~3,000円程度ですが、生理痛などの治療目的であれば健康保険の適用となり、ジェネリック薬なら1,000円程度です。オンライン診療の場合もクレジットカード等での決済が必要になり、親に完全に隠し通すことは難しいので、医師の協力を得ながら「どうしたら理解を得られるか」を考えていきましょう。

生理回数を年3回に減らせる

続いての質問です。「PMSを軽減するために低用量ピルを使用したいのですが、親は副作用や使用開始時の症状を理由に反対しています。そもそも低用量ピルとはどんな薬で、どんな効果があるのか、メリットとデメリットを含めて正しく知りたいです」

低用量ピルは1カ月のサイクルで起こる女性ホルモンの増減の波を抑える薬で、次のような効果・メリットがあります。

低用量ピルの主な効果・メリット

・生理痛やPMSを軽減させる

・ニキビができにくくする

・生理の時期をずらせる

・子宮内膜症などの病気の進行を遅らせる

・排卵を止め、高い避妊効果(99.7%)を得られる

「ピルは体に負担をかけるのでは」と心配する人は多いのですが、実際にはその逆です。ピルを飲むと子宮や卵巣を休ませることができるので、子宮や卵巣の病気が進行するリスクを減らせます。超低用量ピルを使えば、生理が来るのを4ヶ月に1回にすることもできるんですよ。

低用量ピルで生理の回数を減らせる(写真はイメージ)

デメリットとしては、血栓症になるリスクがわずかに上昇すること、飲み始めの2~3日のうちに吐き気が生じることが挙げられます。ただ、血栓症になるリスクは妊娠・出産の際にも上昇し、ピルの血栓症リスクはそれよりも低いことがわかっています。

血栓症の症状出たらすぐに病院へ

血栓症とは血管をふさぐ血の塊ができる病気で、脳梗塞や肺塞栓(そくせん)などにつながるおそれがあります。前触れのある片頭痛がある人、高血圧の人、タバコをたくさん吸う人、家系に若くして血栓症になった人がいる人は、血栓症のリスクが高いため、ピルの服用はおすすめできません。

血栓症のリスクがある人のピル服用はNG(写真はイメージ)

血栓症には「腹痛」「胸痛」「頭痛」「視野障がい」「ふくらはぎの痛み」といった自覚症状があります。血栓症による腹痛は、生理痛や胃腸炎などによる腹痛とは異なり、走ったときに脇腹が痛くなるときのような痛みが突然生じて持続します。

ピルの服用中に、上記のような症状が突然生じたら、すぐに救急医療機関を受診する必要があります。その際は、ピルの処方時に渡される「患者携帯カード」を持参するなどして、ピルを服用中であることを医師に伝えてくださいね。

 
高橋 幸子さん 
たかはし・さちこ 1975年生まれ。埼玉県出身。産婦人科医。埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター所属。同大学病院産婦人科で思春期外来を担当。年間120回以上、全国の小・中・高校などで性教育の講演を実施している。