川口工業高校(埼玉)には、全国でも珍しい「掃除部」という部活動がある。週に2回学校内外の掃除を行い、校舎や歩道をピカピカにしている。部長の山本陸人さん(2年)と、顧問の牧之瀬貴子先生に活動内容を聞いた。(椎木里咲)

4泊5日の合宿はワックスがけに全力注ぐ

掃除部では月のはじめにミーティングを行い、その月に掃除する場所を決定する。廊下やトイレをはじめとする学校内に加え、学校外の歩道なども対象だ。部員を4つの班に分け、ひと班6~7人で振り分けられた場所の掃除を行う。各班には部の中でも掃除の得意な生徒をまんべんなく配置し、メンバーは毎月変わる。

外掃除の様子。通りかかった地域の方から「ありがとう」と声をかけられることも多い

春と夏に校内で開催される4泊5日の合宿では、学校中の廊下のワックスがけを行う。ポリッシャーという機械と剝離剤を使って元々かけられていたワックスをはがしてから新しく塗り直すのだが、夜遅くまで作業が及ぶこともある。山本さんはそんな大変な状況でも、部員と一緒にゲームをしたり、好きなアニメや「推し」の話をしたりすることを楽しみに乗り越えられると話す。

合宿で行うワックスがけ。学校中の廊下のワックスをかけ直す(学校提供)

「きれいにする爽快感」で入部を決意

山本さんが掃除部に入ったきっかけは、入学直後の部活動紹介で配られた部活動の一覧表から「掃除部」を見つけたことだ。「他の中学や高校で見たことがないな」と気になり、見学に行って学校外の草狩りゴミ拾いを体験。「汚いところを自分の力できれいにする爽快感」に楽しさを感じ、入部を決めた。

部長の山本陸人さん

入部前は自分の部屋の掃除を年に1回するかしないかだったというが、現在は週に1~2回行う。汚れを見ただけで「こするだけで落ちる汚れ、落ちない汚れ」「油でできた汚れ」などと判別できるようにもなった。

「掃除部作って」現顧問の一言で生徒が動いた

掃除部の前身となる「掃除愛好会」が設立されたのは2004年。当時創立85年が経過した同校は、校舎が古く掃除が行き届いているとは言えない環境だった。掃除愛好会設立の前年に着任した牧之瀬先生が担当する「化学準備室」も例外ではなかった。

顧問の牧之瀬先生

大掃除の日、副担任を務めていたクラスの生徒が化学準備室の汚れを見て、掃除やワックスがけを行いピカピカにしてくれた。生徒たちの様子を見た牧之瀬先生は「こんなに上手にお掃除ができるなら、掃除部を作って学校の掃除をしてよ」と提案。生徒たちは2週間で10人の部員を集め、「掃除愛好会」が誕生した。現在の掃除部に昇格したのは、2009年だ。

優勝の秘訣(ひけつ)「ゴミの場所を推測」

そんな掃除部が力をふるう「スポGOMI甲子園2022」の全国大会が12月26日に開催される。「スポGOMI甲子園」とは、高校生3人が1チームとなり、1時間で指定されたエリアのゴミをどれだけ拾えるか競う大会だ。山本さんの率いるチームは8月に行われた埼玉県大会で4.65kgのゴミを拾い、2位のチームに約1kgの差をつけ優勝した。

埼玉県大会の様子。ペットボトルのゴミが一番多かった(学校提供)

勝利の秘訣は、チームで話し合ってゴミの落ちている場所を推測したこと。「日々部活で外掃除をしているので、植木の裏や歩道など、『人がゴミを捨てそうなところ』を把握しています。それを踏まえて頭を回転させながらゴミを集められました」

過去に優勝経験もある同校。昨年も先輩が同大会に出場したが、優勝することはできなかった。「先輩の無念を晴らしたい。自分にとっては初めての全国大会だけど、勢いをつけて優勝を目指したい」と意気込みを語ってくれた。

川口工業高校・掃除部 部員31人(3年生3人、2年生11人、1年生17人)。週2日、放課後2時間活動。スポGOMI甲子園2022埼玉県大会優勝、全国大会出場。