羽鳥葵さん(京都・東山高校3年)の写真作品「受験生(ぼくら)の姿」を紹介します。人間が「操り人形」となり勉強する姿を収めたこの作品は、第46回全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)の写真部門に出品されました。どのように撮影したのか聞きました。
受験の苦悩を操り人形で表現
―作品のテーマを教えてください。
「受験に対する苦悩」をテーマに作品を作りました。表現したかったのは、まさに受験生である今の自分です。受験を決めたものの、そこには避けて通れない勉強、勉強の毎日。受験勉強の日々に縛られてしんどい、でもやるしかない、逃げられない……。そんなブルーな気持ちを表しています。作品を見て、受験生なら誰もが共感してくれるのではないかなと思います。
実は、「実際の人で操り人形を撮る」というコンセプトが先に決まっていたのですが、「操り人形=今の自分たち」みたいやな、と思ったのがテーマのきっかけです。「少しでもいい大学に! そのためにはとにかく勉強!」みたいな風潮に操られている自分たち、そんな状況に対する静かなる心の叫びも表しています。
校内の文化祭で展示した際に、「この操っている手というのは誰の手?」と先生に聞かれた時はとても答えにくかったです(笑)
こだわりの角度で撮影
―こだわったり工夫したりしたポイントはどこですか?
モデルの表情を意識しました。より悩んでいる、悲しんでいる様子を出すために目線や顔の角度などを変えて撮り続けました。当初、頰の涙はなかったのですが、苦悩を伝えるために付け加えました。人形感を出すために、あえて紙で作った涙を貼っています。マイナスな心情を表すために全体的に青い画面にしました。
撮影のときにはモデルの立ち位置や手の位置・角度、顔の表情を工夫しました。全体のバランスを考え、配置するのが難しかったです。モデルの先輩、同級生とコミュニケーションを取り、アドバイスももらいながら撮影しました。
―難しかった点、苦労した点を教えてください。
操っている手のひもと、操り人形のモデルにくくられたひもは実際にはつながってはいないので、手の位置を細かく指示してつながって見えるように合わせるのが難しかったです。操り人形のモデルは一度ひもをくくり付けると撮り終わるまで動けませんし、操っている手のモデルもずっとカメラの前で手をかざし続けてくれたので、モデルの2人は体力的にかなりきつかったと思います。
「納得の一枚」まで撮り続ける
―撮影中、印象に残っているエピソードはありますか?
「実際の人で操り人形を撮る」というのは、「他の部員に撮ってもらいたい写真の絵コンテを描く」という写真部の企画でO君が考えてくれたものです。彼のアイデアがなければこの作品はそもそもできませんでした。夜遅くまで残ってモデルをしてくれたH君とM君、照明をしてくれたS君の4人のおかげでできた作品です。協力に感謝です。
―よい作品を作るためのコツ、上達するためにおすすめの練習方法を教えてください。
とにかく撮ることです。アングルを変えたり、照明を変えたり、試行錯誤しながら思い描く写真に近づけていくことです。僕は何枚も撮ったうちの一枚を選ぶのではなく、納得の一枚 、「来たー!」と思える一枚が撮れるまで撮り続けるようにしています。
コンテストで作品を評価していただけるのはもちろんうれしいことですが、そこを意識するよりも、まず自分が撮りたいものや伝えたいことを撮る、見た人に共感してもらえる写真を撮ることを心がけています。