「ヤー! パワー!」でおなじみのお笑い芸人・なかやまきんに君。ボディービルダー、YouTuberなど多方面で活躍中のきんに君は、ロサンゼルスへの「筋肉留学」経験を持つ。今夏、留学に興味がある高校生対象のオンライン交流イベント「なかやまきんに君×#せかい部 高校生にパワー!!注入」(トビタテ!留学JAPAN主催)に登壇し、MCを務めた高校生たちの質問に回答。自身の留学経験を踏まえながら高校生たちに「パワー」を届けた。(文・本間愛深=大学生ライター、写真・文部科学省提供)

筋肉の聖地「ロサンゼルス」に憧れて

―「筋肉留学」をしたきっかけは何ですか?

17歳の頃に通い始めたジムが、ボディービルをメインにやっているマニアックなジムだったんです。そこで初めて筋トレを始めて、どんどん魅力にはまっていきました。

なかやまきんに君が留学を語る

そのころ、筋肉情報雑誌「月刊ボディビルディング」で、日々筋肉のことについて勉強していました。その特集で、アメリカ西海岸の筋肉の聖地と言われる、ロサンゼルス近辺の情報が多く載っていたんです。「僕はいつかここに住みたいんだ」という思いが留学のきっかけのひとつ。

そして、芸人活動をしていて、「何かこのままでは僕はもう壁を越えられないんじゃないか」と感じていました。ロサンゼルスにはエンターテインメントの世界的な中心地「ハリウッド」もあり、そこでいろんなことを学べるんじゃないか……これらの思いで行ったのが、「筋肉留学」です。

留学での挑戦が自信に

―留学前後での一番の変化は何ですか?

留学すると、「自分で何かをしないといけない状況」がたくさん生まれるんです。例えば、僕が留学をしたのはインターネットが出だしたくらいの時。当時パソコンは全然できなかったのですが、作文を提出したり、ビザのことに関して聞いたり話したりしないといけなかったので、自分一人ですることが増えて……。

自分一人でなんとかしなければならない状況が増える

「ハリウッドでチャンスをつかみたい」という想いがあったので、「自分にできることは何か」と考え、自分で映画を作りいろんな人に見てもらうイベントを開催。大変でしたが、やっぱり、乗り越えた時にすごく自信がつきました。

留学は「楽しかった」という感情だけではないですが、いろんなことを乗り越えることで、帰国して全然気にせずに滑りまくることができました(笑)

留学は旅行とは違う

―留学ならではのメリットや魅力を教えてください。

住むということは生活しないといけないので、留学は旅行とは違うと思います。携帯電話の借り方や、家賃はどうするかなど、「住んでみないと何が起こるかわからない」ことが多くあるので……。

でもその分、いろんなことが起きるので、成長できると思います。日本では簡単に感じる買い物ができないことも。そんな経験をすることで学ぶことが多くありました。

―海外で夢をかなえるにあたって挫折した時や挫折しそうな時、どうやってモチベーションを保っていますか。

僕が留学をしたのは、YouTubeができはじめた頃。見たら日本のお笑いの番組もやっていて……。先輩、同期の芸人、後輩が一生懸命やっているのを見たときに、自分たちのライバルというか、同じ仕事を頑張っている人たちを見て、「まだまだ頑張らないとな」というモチベーションでいました。「同じ志を持っている人たちを見てモチベーションを上げる」ということをやっていました。

「努力はいつか役立つ」厳しい大学ライフ乗り越え

―ネイティブすらも専門用語に苦戦して諦めてしまう「キネシオロジー(運動学、運動生理学)」を専攻したと聞きました。2年間の大学ライフは楽しいと思いましたか?

「楽しいキャンパスライフでしたか」という質問に対しては、正直言うと、めちゃくちゃつらくて大変でした。でも僕は、「決めたことは自分を信じて、これは必ず何かに役立つ」と頑張っていました。

「タレントだったら、アメリカのいろんな地域に旅行して、いろんな経験してエピソードを作った方が帰ってきた時に役に立つよ」とも言われましたが、「僕は必ず自分で思ったこと(大学で学ぶこと)が役に立つ日が来る」と思っていました。

「筋肉留学」中はつらくて大変だった

なぜ(頑張れたの)かというと、芸人でデビューした時に「筋肉キャラは飽きられるし、どうせ続かないからやめた方がいいよ」とみんなに言われましたけれど、「筋肉とお笑いをかけ合わせると何かが起こる」という根拠のない自信があったから。

YouTubeで発信できるようになった時に、英語でアメリカ人と話しているのを見てもらい「筋肉もできるけど勉強もできる」ことが今すごく役に立っています。勉強は楽しくはなくて、大変なことばかり。ですが、「努力をしたことはいつか役に立つ」ことは僕が筋肉から学んだこと。それを留学でも生かしました。

日本の文化や歴史を話せるようにしよう

―留学する上で、日本にいるうちに勉強しておいた方が良いことや、やっておいた方が良いことがあったら教えてください。

「日本について、日本とは何かを話せるようにしておくこと」が非常に大切です。海外に留学するといろんな地域から学生が来て、「どこから来たの?」という話になるから。

留学に行くなら日本のことを知っておこう

「日本は実はこういう国で、こういう文化や歴史がある」と簡単で良いので話せるようにしておくと、コミュニケーションがすごく取れる。自分のアイデンティティーに誇りを持つことができるし、アピールもできるんですね。

―これだけは、日本にいたら絶対にできない、留学でしか得られないと思ったことは何でしたか?

「その瞬間でしか会えない、その場所でしか会えない人との出会い」は良い経験になると思います。海外に行くと全く価値観が違います。「こんな考えがあるのか」というのは本で読んでもわからないので、びっくりするようなことがいっぱいあって……。人との出会いはその瞬間でしかできないので、貴重な出会いを大切にできるのは留学のひとつの醍醐味(だいごみ)かなと思います。

―言語が通じなくても、絶対に笑いがとれるギャグを教えてください。

アメリカでやった時にウケたやつですね。日本語の発音で「パワー!」とやると、面白い発音だなと思って、みんな笑ってくれますよ。

みんなで「パワー!」

ちょっと斜めに構えてください。右腕を出して、「パワー!」と言います。この後に、1、2秒真面目な顔をして、そのあとに笑顔になります。笑顔は世界共通ですから、世界で絶対にウケると思いますよ。

なかやまきんに君 1978年生まれ。福岡県出身。吉本お笑い養成所NSC22期生。2000年にデビューし、2003年に「ABCお笑い新人グランプリ」審査員特別賞を受賞。2006年、ロサンゼルスへ「筋肉留学」。2007年にはサンタモニカで全編英語の単独公演を行う。また、2009年にはサンタモニカカレッジに入学し、運動生理学を学ぶ。2017年、「きんにく侍」として世界デビューを果たし、2018年にはハリウッドにて全編英語の公演を行うなど、世界で活躍するボディービルダータレント兼YouTuber。

トビタテ!留学JAPAN

トビタテ!留学JAPANは、文部科学省の官民協働留学促進キャンペーン。海外留学する高校生、大学生を倍増する目標を掲げてスタート。主な取り組みである「日本代表プログラム」は、民間の寄付を財源とし、民間企業約250社から120億円以上の寄付を受け、返済不要の奨学金でサポートする留学支援制度。

「#せかい部」は、「トビタテ 留学JAPAN」の取り組みのひとつ。学校や地域を超えた同世代が SNSでつながり、海外に関する情報や留学情報 を相互に発信。リアルな「世界」を知るきっかけをつくる、高校生による高校生のためのソーシャル部活動。