東京では無敵といってもいいほど頭一つ抜けた存在である駿台学園。全国制覇を目標に掲げ、毎年優勝候補に挙げられながらも、2016年以来、インターハイの優勝から遠ざかってきた。昨年のインターハイも決勝で敗れた悔しさをバネに、今夏こそ相手を圧倒するバレーで王座奪還を目指す。(文・田中夕子、写真・平野敬久)

昨年は全国決勝で敗れる

目指すは昨年の雪辱だ。

6月26日に開催された東京都インターハイ予選を圧倒的な力で勝ち抜き、1位で全国出場を決めた駿台学園。中学時代から全国大会で華々しい戦績を残した選手が揃う、全国有数の強豪だ。春高やインターハイでは常に優勝候補として挙げられるが、実は16年のインターハイ、国体、17年の春高を制し「三冠」を成し遂げたのを最後に、全国優勝はない。昨年のインターハイも、決勝まで勝ち進んだが2対0とリードした状況から予選では勝利していた鎮西に逆転負けを喫し、準優勝だった。

オフェンスだけでなくブロックからのディフェンスも駿台学園の武器

相手から嫌がられるチームに

全国大会に出場し続け、決勝進出を果たすだけでも快挙ではあるが、「シルバーコレクター」を脱却すべく、今季のチームが掲げる目標は1つ。主将でリベロの布台聖(3年)は意気込む。「目指すのは日本一。今年のチームは高さがないので、守備力は絶対どのチームにも負けたくない。どんな相手からも『駿台とやるのは嫌』と思わせるようなチームになりたいです」

相手から嫌がられるチームとはどんなチームか。布台主将は「まずはサーブから相手を圧倒するようなプレッシャーをかけること」と言うが、もちろんそれだけではない。ただ打てばいいというのではなく、相手に「考えさせる」こと。そのためには、相手の裏をかくような戦術、やられたら一番嫌がるだろうことを考え、実行する。それこそが駿台学園の強さだ。

精神的支柱としてチームをけん引するリベロの布台主将(写真中央)

その片鱗は東京予選でも随所で見られた。たとえば、自チームのサーブは相手のウイークポイントや、攻撃を封じるための場所を的確に狙って守備を崩す。攻撃が単調になったら、点差を突き放す絶好のチャンスとばかりにたたみかけるのだが、当然相手は「強打を打ってくる」という場面でも、ブロックの裏やレシーバーがいないところへフェイントを落とすなど、想像の1枚上を行く。

「考えるプレー」練習から徹底

「相手を圧倒するような“考える”プレーは日ごろの練習から徹底されている」と言うのはU18日本代表候補にも選出されているミドルブロッカーの秋本悠月(2年)だ。「簡単に点を取ろうと急ぐのではなく、(相手の)ブロックに当ててリバウンドを取ってから、スピードのある攻撃で着実に点を取る。練習でも意識して取り組んでいるので精度が少しずつ磨かれてきたところもありますが、まだまだ全国で勝つためには課題がたくさんあります」

高さを生かした攻撃力、ブロックで2年生ながらチームを盛り立てる秋元

中学時代の経験値が高く、高校でも世代を代表する選手が揃う。だが決勝であと一歩までいって勝ち切れない理由は何か。

秋本と同様に、U18日本代表候補に選出されており、チームでもエースとしての活躍が期待される佐藤遥斗(3年)も、「去年に比べてテンポが速くなり(攻撃が)多彩になった」と手ごたえを示す一方、もう一段階技術の精度を上げることや守備との連動など、取り組むべき課題を挙げる。「1本目のパスが低くなると、攻撃の準備ができないので、そこは打ち急がずリバウンドをもらうとか、相手の空いているところが見えたらプッシュで落とすとか、その時々の状況判断が重要。常にベストな選択ができるように、もっと考えてプレーしなければならないと思うし、インターハイではもちろん優勝が目標ですが、今の自分たちのバレーが、どこまで通用するかを確かめたいです」

チームのエースとして、佐藤は昨年のインターハイの雪辱を誓う

理想とするのは、攻撃は偏りなく、前衛、後衛、同じテンポで至るところから一斉に仕掛けるバレー。チームを率いる梅川大介監督が「今年度が始まる時にどんなバレーをしたいか、選手たちが自分たちで考えて決めた。まだ3割程度の完成度でしかないが、ここから基準値を上げていきたい」と語るように、完成には程遠い現状ではあるが、目指すバレーや目標が高いからこそ、越えなければならない壁も高くなることの裏返しでもある。

運動量確保とけが予防も怠らず

香川県で開催されるインターハイ本番は、猛暑の8月。連戦で体力の消耗も心配要素ではあるが、駿台学園は日ごろからボール練習だけでなく週に3日はトレーニングを実施しており、筋力、体力向上はもちろんだが、ジャンプの回数なども計測し、けが予防にも積極的に取り組んでいる。相手を上回る運動量、そして常に裏をかくような虚を突き、相手を混乱させるバレーで目指すは日本一。

多彩な攻撃陣を支える守護神であり、チームを束ねる主将。来るインターハイへ向け、布台が力強く言った。「下級生も多いチームなので、勢いに乗ればどこにも負けない強さがある反面、雰囲気が悪くなると崩れやすい。駿台は1人1人の力だけでなく、組織で戦うチームなので、組織として力を発揮できるように、もっとチームを引っ張れるキャプテンになりたいです」

東京で圧倒的な強さを誇りながら、6月初旬に行われた関東大会では決勝で習志野(千葉)に敗れた。多くの悔しさと雪辱を晴らすべく、より高い完成度を目指し、インターハイでの爆発を誓う。

チームデータ

目指すは日本一。そして目指すバレーにどこまで近づけるか

1963年創部。部員数は54人(3年生13人、2年生21人、1年生20人)。梅川監督は以前VリーグのNEC(女子)でアナリストを務めており、駿台学園でもデータを駆使したデータバレーで全国大会常連の強豪。日本代表にも選出された村山豪(ジェイテクト)を擁した16年のインターハイ、国体、17年の春高を制し、三冠を制覇した。