松下日向子さん(岐阜・関商工高校3年)の写真作品「命を吹き込む研師」を紹介します。地元・関市の日本刀職人が刀と向き合う姿を撮影したこの作品は、全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)の写真部門に出展予定です。どのように撮影したのか聞きました。
日本刀職人が命吹き込む一瞬捉えた
―作品のテーマを教えてください。
地元である岐阜県関市は、鎌倉時代から800年以上にわたって刀鍛冶の技術が受け継がれています。私は「伝統ある日本刀に関わる職人を撮影したい」という気持ちで作品づくりをしました。
火花が飛び散る迫力のある日本刀の鍛錬の様子。精密な装飾を施す鞘師の作業風景。そして、刀と向き合い刀剣に輝きを与える研師の作業風景を撮影しましたが、その写真の中で一番よく撮れた作品がこの研師の写真です。
日本刀鍛錬と比べると迫力が劣るように感じられるかもしれませんが、張り詰めた静寂の中で、刀に命を吹き込む研ぐ音だけが聞こえてくるような作品に仕上がりました。
―こだわったり、工夫したりしたポイントは?
こだわった点は、刀剣の輝きを強調するために限界まで露出を抑えて、キラッと光る刀剣が目立つようにしました。また、研ぎ水でぬれた研師の手指をリアルに表現するためにシャッター速度を上げて、研いでいる手指をブレさせないようにしました。
さらに、桶に鞘師の顔が写り込むような角度で撮影したところもポイントです。
ピンと張り詰めた雰囲気の中撮影
―何が難しかったですか?
難しかった点は、露出を限界まで抑えるとともに、動く手指がブレないギリギリのシャッター速度に調整しながら撮影したところです。
撮ってはプレビューを確認して、設定を微調整して、また撮影するの繰り返しで、その場で試行錯誤を繰り返しながらの撮影で、自分のイメージ通りの写真を撮るためにとても苦労しました。
―撮影中のエピソードを教えてください。
撮影させていただいた研師の方は、ピンと張り詰めた雰囲気の中で、真剣に刀研ぎをされていたため、声をかけてポーズをとってもらうことができませんでした。
イメージ通りの作品を仕上げるために、カメラの露出とシャッター速度を調整しながら、とにかく多くシャッターを切った結果、満足できる写真を撮ることができて、とてもうれしかったです。
―よい作品を作るためのコツを教えてください。
普段から多くの写真を撮り、自分なりに良い作品が撮れたと思っても、そこで満足して終わるのではなく、背景や光などをとことん突き詰めて、自分自身で納得のいく作品が撮れるまで、粘り強く撮り続けることが大事だと思います。