強豪として知られるトキワ松学園高校(東京)写真部。7月31日から開幕となる全国高校総合文化祭東京大会(とうきょう総文2022)の写真部門(東京都美術館、7月31日、8月2~4日)には、部員2人の出展が決まった。部としては2年ぶり8度目の出場だ。写真部門の生徒実行委員会には、部から3年生7人が参加する。出展者、運営スタッフの生徒たちに、総文祭の意気込みなどを聞いた。(文・写真 中田宗孝)

良い作品作りを目指して意見言い合い

昨年の第44回東京都高等学校文化祭写真部門中央大会で最優秀賞に輝いた三原さん(左)と、優秀賞を受賞した木原さん。2人の作品は「とうきょう総文2022」に出展される

―みなさんの写真部は、普段どのような活動をしていますか。

前部長の赤間理緒さん(3年) 校内外での撮影が主な活動です。校外の撮影だと最近では「新宿御苑(庭園)」で、新入部員に向けたポートレート(主に人物を被写体とした写真)講座を行いました。部員たちは、撮影した写真からベストショットを選んで講評会を実施。大きなモニターに写真を映しながら、顧問の先生を含めて意見交換します。

木原夢月さん(2年) 講評会での部員からのアドバイスを今後の撮影に活かしていきます。部員と一緒に撮影の技術力を身につけていくのが楽しいです。

赤間さん みんな学年関係なく、写真を見て思った感想を伝えるようにしています。

父から譲り受けた「Canon EOS 80D」で赤間さんが撮影した愛猫。「かわいさの中にも凛々しさ、かっこよさを感じる瞬間を写したいと思いながらシャッターを切りました」(学校提供)

三原百仁佳さん(2年) 撮影中は、先輩部員の技術などを学ぶ機会でもあります。寝っ転がってカメラを構える先輩の姿を見て、こんな風に色々な構図を見つけていくんだなと参考になったこともありました。

「とうきょう総文2022」写真部門の生徒実行委員長を務める赤間さん(左)、同総文祭に作品展示が決まった三原さん(中央)と木原さん

ポートレートのモノクロ写真で全国へ

―とうきょう総文2022の写真部門に展示される、自身の撮影作品について紹介してください。

三原さん 「冒険者」というタイトルを付けた、ポートレートのモノクロ写真です。コロナ禍で私たちの高校生活は、普段の授業はもちろん、部の活動日も制限されてきました。そんな状況ではあるのですが、勉強、写真、さまざまなことに挑戦や冒険をしていきたい気持ちをこの一枚に込めました。

「冒険者」(三原さん撮影)。コロナ禍でもチャレンジ精神を持ち続ける強い意志をあらわした(学校提供)

木原さん 飼い主と砂浜を散歩する犬を額縁に収めた作品「本日の主役は」です。高1のとき、海辺で撮影した写真を撮ろうとだけ決めて、父親に神奈川県の海岸へ連れてってもらいました。季節は秋、到着したのが午後だったので日没が早くて焦っていたのを覚えています。

「本日の主役は」(木原さん撮影)。額縁と犬の遠近感の妙、砂浜のリアルな質感を一枚のカットに収めた(学校提供)

撮影用の小道具として、100均で購入した額縁を持参しました。額縁を活用したウェディングフォトをSNSでみて、自分の作品にも使えるかもと思っていたんです。

―撮影中や作品づくりでのエピソードを教えてください。

木原さん 沈む夕日を額縁に収めようとしたり、額縁に収まるよう父親に歩いてもらったりしていたときに、犬と散歩中の女性が額縁の間を通ったので、その瞬間を偶然撮影できた一枚なんです。

実は、このカラー写真の仕上がりに私自身は当初ピンときていなかったのですが、顧問の先生に「いいね」と言ってもらえたことで、モノクロ作品として出品しました。

三原さん 私は、写真部の部員をモデルに校内で撮影。作品内でモデルが被る布は、教室のカーテンなんです。カーテンを「赤ずきんちゃん」のように被ってもらって、かわいらしい写真をイメージしながら撮影をしていたのですが、何かインパクトが足りないなって。それで片目をカーテンで隠して撮影しました。完成した写真をモノクロにしてみると、カーテンの陰影がカッコよくなったんです。

「Canon EOS RP」を愛用する三原さん。「ポートレートを極めたいです。被写体に指示が上手く出せるよう、ファッション雑誌などでモデルのポージングを勉強しています」

ちょっとだけ自信が持てた

―写真コンテストで三原さんは最優秀賞、木原さんは優秀賞に輝き、全国大会にあたる「とうきょう総文2022」に出展されます。

三原さん たくさんの賞を受賞している部なので、私も獲れたらいいなと漠然と思っていたので嬉しいです。「冒険者」はじめ、最近は顔がアップのポートレート写真ばかりになってきたので、新しい構図にも挑戦したい。この受賞が、自分の引き出しを増やしたいという意欲につながりました。

高校から写真を始めた2人。とうきょう総文2022では、写真好きの共通点を持つ全国の同世代との交流を楽しみにする

木原さん これまで表彰経験がなく、本当に一生に一度の出来事なんじゃないかって……。私は、何か1つ、特技といえるモノが欲しくて写真部に入部したんです。私の写真を評価していただき、ちょっとだけ自信が持てて、より一層写真を頑張ろうと思いました。これからも自分の撮りたい構図やアイデアを探し続け、自信を持っていい写真だと思える一枚を撮影したいです。

「東京ならでは」の大会開催目指して

―赤間さんは「とうきょう総文2022」写真部門の生徒実行委員長です。大会本番に向けてどんな企画を練っていますか。

赤間さん 写真部門では大会期間中に「撮影会」を実施します。浅草はじめ東京各地を巡る12の撮影コースを設定して、参加者に思い思いの写真を撮ってもらいます。

コースの中には、日本大学芸術学部写真学科、東京工芸大学芸術学部写真学科にご協力いただき、同大学の写真講師によるレクチャーもあります! 部門の表彰とは別に、「撮影会の写真コンテスト」も計画しています。

赤間さんは、高1から写真部門の委員会メンバーとして活動し、同部門委員長にも自ら立候補。「私たちの代で東京開催となる奇跡的な機会。大好きな写真にかかわる大きな大会の運営に携わりたいと思い参加しました」

―コロナ禍での大会準備は大変ですか。

赤間さん そうですね、オンライン会議では、メンバー間で情報がうまく伝達できないこともありました。また、生徒交流会や撮影会といった企画をゼロからイチにしていく作業、考えた企画を運営していくのは、部活の部長とはまた違った大変さがあります。

私たち写真部門の委員会メンバーたちは、東京大会を成功させたい、全国から集まる参加者のみなさんに良い大会だと思ってもらえるよう頑張っています。「東京ならでは」の企画で、参加者が楽しんでもらえる大会に絶対します!

―写真部門の参加者が感じられる“東京ならではの総文祭”とは。

やはり撮影会です。撮影会のコースには、みんなが使用する写真機器を扱う「ニコン」「キヤノン」「富士フイルム」といった大手精密機器メーカーにご協力いただくコースを設けており、プロのカメラマンの指導やセミナーなどを行います。このような体験ができるのも、“東京ならでは”だと思います。

木原さんは愛用の「Canon EOS Kiss X10i」で、草花や風景、スイーツをよく撮影するという

部活データ

2009年創部。部員52人(3年生11人、2年生10人、1年生14人、中学生17人)。週3日活動。月1でプロの写真家からの指導もあおぐ。学校行事のスポーツ祭典(体育祭)で撮影係を務め、文化祭では保護者や受験生を対象にした撮影会などを行い、毎年盛況を博す。