悩み 化学を好きになれない

私はどーしても化学を好きになれません。先生が言っていることの意味が全く分からず、宇宙人に見えます(笑)。どうしたら、化学を好きになれますか? また、勉強方法を教えてください。(高校3年女子)

回答 日常生活への貢献 知って(プロ家庭教師 吉永賢一先生)

そこまで好きになれないのに、それでも「好きになりたい!」っていう気持ちが貴いよね。

それはたぶん、心のどこかで「化学の価値」を感じているからだと思うんだ。化粧品や服の材料、薬の有効成分、電池など、日常生活でお世話になる製品の中に、「化学」を活用して作られているものがたくさんある。

そして、化学反応の不思議さ、面白さ。有名なところでは、水素と酸素から水を作ること。これは教わらなければ、自分で気付くのはとても難しいと思う。料理だって化学反応だから、化学の知識が役立つよ。

歴史的にも、化学は人類に貢献している。火薬を尿と綿から作ってきた歴史があるし、ハーバー・ボッシュ法を開発したことで化学肥料を作れるようになって、食糧増産が大きく進んだ。そして、窒素循環の適正化は、現代の人類の課題だ。

だから、化学を好きになるためには、教科書にあるような理論を学ぶ前に、こうした化学の面白さや歴史を説明してくれる読み物を読んでいくのもいい。

じゃあ、理論はどうやって学んだらいいんだろう。まず押さえておいてほしいことは、高校化学の理論の基礎となる物質観と原子観だ。どういうことかというと、高校化学では、「物質は、空間(真空)の中の原子によって構成されている」と考える。

そして、この「原子」は、プラスに帯電している原子核とマイナスに帯電している電子からできていて、プラスとマイナスは引き合う、プラス同士、マイナス同士は反発する。たったこれだけの考え方を基本にして、さまざまな現象を説明していくんだ。

すごいと思わない? 例として気体を説明すると、磁石と似て、ゆっくり近づければくっつくけれど、部屋の中で離れて飛んでいればくっつかない。このように「原子のイメージ」は、物質全般の性質を説明できるんだ。

一方、高校化学に出てくる数式は、部分的な「法則」にすぎない。例えば、「理想気体の状態方程式」が説明できるのは、「気体」の性質に限られるよね。

だから、数式だけで考えずに、なるべく、この「原子のイメージ」も使って説明できるようになっておくことが、化学を得意にするコツだよ。

 

 

 

よしなが・けんいち  1971年生まれ。東京大学医学部家庭教師研究会代表。群馬県立前橋高等学校卒業、東京大学理科Ⅲ類(医学部)に入学。著書に『東大家庭教師が教える 頭が良くなる勉強法』『東大家庭教師の子供の頭が良くなる教え方』ほか。