照れ屋で口下手。できれば目立つことはしたくない。でも眼鏡をコンタクトレンズに替え、コートに入れば大変身!八王子(東京)男子バスケットボール部の新号健主将(3年)=東京・小岩四中出身=のキャプテンシーに迫った。 (文・写真 青木美帆)

入学直後から不動のスタメンポイントガードだ。ゲームをコントロールしつつ得点も稼げる。新号が波に乗れば、チームは爆発的に勢いづく。「1年生の時から(この代の)キャプテンは新号しかいないと思っていた」と石川淳一監督(58)は話す。

決して社交的な性格ではない。昨年の全国高校総体(インターハイ)後に主将に指名された時も「流れ的に自分だと思ってはいたけど、できればやりたくなかった」というのが本音だった。

新号の意識が変わったのが、昨年11月の全国高校選抜優勝大会(ウインターカップ)都代表決定戦だった。最終ピリオド開始早々、新号は5つ目となるファールで退場。チームはそれまでリードしていたが、絶対的な司令塔を失った途端に浮き足立ち、79‒83で敗北。5年ぶりに出場権を逃した。

 

 

 

 試合終了のブザーが鳴った瞬間、新号は頭を抱えて泣いた。「先輩に偉そうに指示を出していたくせに、最後は自分のせいで負けた……」

初めてバスケットボールをやめたいと思ったが、あらためて気持ちを整理し、思った。「勝つも負けるも自分次第だ」。新チームではポイントガードとして、そして主将として「自分が責任を持たなきゃいけない」と強く誓った。

主将になり、まず取り組んだのは午前7時25分から始まる朝練に一番乗りすることだった。起床は5時。電車を乗り継いで片道1時間40分の道のりを通い、朝練開始15分前にはコートに入る。欠席や遅刻は3年間一度もない。「単純にチームから離れたくないんです。自分がいないときにチームが良くなっていると……悔しいんで」。照れくさそうに笑った。 石川監督が「こちらから声を掛けない限り、弱音は絶対に吐かない」と言えば、副主将の野間進太郎(3年)=鹿児島・清水中出身=は「普段はまったくすごく見えないけど、バスケになると全然違う顔つきになる」と話す。意識してチームを引っ張り上げようとしているわけではない。誰よりもバスケットボールに真摯に打ち込み、「チーム」という居場所にこだわる姿勢に、自然と仲間が吸い上げられていく。それが新号の主将としての素質なのだろう。

11月10日からのウインターカップ都代表決定戦で2位以内に入れば、高校生活最後の全国大会出場が決まる。「全国制覇を目指してやるだけです」と、静かな闘志を燃やしている。