森みなみさん(山口・防府高校2年)の写真作品「公然の秘密」を紹介します。部室にいる人、下校中通りかかった2人、カメラを構えた撮影者自身という3要素を1つの画面に収めたこの作品は、全国高校総合文化祭(紀の国わかやま総文2021)の写真部門で奨励賞を受賞しました。どのように撮影したのか聞きました。
どんな写真にもドラマがある
―作品のテーマを教えてください。
「偶然生まれるドラマ」です。
どんな写真にも、バックグラウンドやドラマがあると、一眼レフを手にして写真を撮り始めてから気が付きました。「これをどんな風に膨らませようか」と時間を費やした作品に、結果的に評価をいただけてとてもうれしいです。
この写真では、外を歩いている2人、部屋の中に1人、そしてそれを一緒くたに撮っている私という3つすべてを同じ画面に収めることに偶然成功し、しかも思いがけずその中にドラマ性を見出すことができました。
もちろん時間はかかったけれど、見た人が「ん?」と足を止めてくださるような写真にできたのではと感じています。
画面構成に工夫、数日かけて撮影
―こだわったり、工夫したりしたポイントは?
こだわったのは画面構成です。画面全体に捉えたいものをきれいに収めて、納得いくよう撮影に数日かけたこともあり、特に思い入れがあります。
最初は外が暗くなり窓に映った自分の姿を偶然撮影しただけだったのですが、「それにドラマ的なストーリーを展開させるためにはどうすればいいだろう」と、人物の配置に重きを置いて偶然を狙いました。
―何が難しかったですか?
がちゃがちゃと騒がしくてまとまりのない画面にならないように、ベストなタイミングを狙うことに多くの時間を費やしました。
そして、写真により深みを持たせるための題名選びは特に苦労しました。題名に関しては、審査員の方にもう少し別のアプローチがあったほうが良かったとご指導をいただいたことが印象に残っています。
「偶然」が作品を生むおもしろさ
―撮影中のエピソードを教えてください。
私が何気なく撮った写真を「工夫すれば面白いよ」と顧問の先生がフォルダの中から拾いあげ、より良い作品として提出できました。
この写真は、たまたま部室に残っていた先輩、そのときたまたま通りかかった2人を押さえています。偶然1つの作品が生まれるのは、写真の面白い点だと改めて感じました。
―よい作品を作るためのコツを教えてください。
私自身、カメラは高校になるまで触ったこともほとんどなかったため、詳しくはありません。ですが、「これを撮りたい」と定めたものを撮るとき、テーマから外れた何気ない写真も、必ず一緒に収めておくように心がけています。