実戦を意識したミニゲームでパスやボールを扱う技術を磨く

昨年度の全国高校サッカー選手権に出場した国学院久我山(東京)サッカー部。帝京や駒場など強豪ひしめく東京都予選を、パスを細かくつなぐサッカーで制した。狭いグラウンドでミニゲームを中心にした練習を重ね、全国の頂点を目指している。 (文・写真 茂野聡士)

2タッチ以内を意識

グラウンドは野球部と共用しているため、練習で使える広さは50×30メートルほど。その中で、100人を超える部員が練習する。
 部は「学業との両立」を掲げているため、平日の練習は2時間から2時間半。部員は開始から終了まで一度も休むことなく、濃密な時間を過ごす。
 目指しているのはボールを保持し続け、パスをつなぐサッカー。練習で重視するのはボールコントロール、ポジショニング、状況判断の3つ。それらを4対2や6対3、3対3などのミニゲームを通じて身に付ける。
 4対2や6対3では、部員は2タッチ以内で正確なパスを出すことを要求される。常に味方との距離感を測りながら動き続け、敵にボールを奪われないよう細かくパスを回し続ける。
 10㍍四方のスペースに小さなゴールを2つ置き、3対3で点を取り合う試合形式の練習では、パスを受ける選手が空いたスペースを探して走り続ける。激しいボールの取り合いもあり、終わった時には肩で息をする部員が多かった。

狭さは問題にならない

主将のDF内藤健太(3年)は「おのずと、味方にも取りやすいパスを出そうと心掛けるようになりました。利き足や体勢を考えるようにしています」と話す。
 昨年の選手権都予選では、ボールを保持し、パスを回してゲームを支配する場面が目立った。日頃の練習のたまものだろう。MF飯原健斗(3年)は「グラウンドは狭いけど、細かくパスを回す久我山のサッカーをする上では問題ありません」と胸を張った。狭い練習スペースでも、強くあり続けることは可能なのだ。

 

 

DF 内藤健太(3年主将)=埼玉・所沢中央中出身=

 

パスを一本一本正確に通すことを心掛けています。ボールを受ける時も、トラップではじいてしまわないように意識しています。

DF 鴻巣良真(3年)

 

ボールを正確に蹴ったり、止めたりすることに集中しています。その上で自分の特徴である足の速さを生かしていければと思います。

MF 飯原健斗(3年)=神奈川・西高津中出身=

 

ボールタッチする回数はなるべく1 度。ボールを絶対に失わず、常に攻撃の起点になれるポジショニングを取るように心掛けています。

マイボールを大切に 李済華監督

 

私は「サッカーは、サッカーすることでしか上手にならない」と考えているので、練習ではゲーム形式の練習がほとんどを占めます。
 久我山のサッカーは、FC バルセロナをはじめとしたポゼッションサッカー(ボールを持ち続けるサッカー)と評されることがよくあります。マイボールを大切にして試合を進める意識が高いからでしょう。結果として「パスがつながるサッカー」に見えるのだと思います。
 今年のチームは、昨年のような強烈な個人能力を持った選手がいません。しかし、その分、全員がパスをつなぐ意識を高く持って練習に臨み、プリンスリーグ関東やインターハイ、高校選手権などの大舞台で戦ってほしいと考えています。

リ・ジェファ(59)
1955年3月1日、神奈川県生まれ。95年から国学院久我山サッカー部コーチを務め、2007年から監督。
【TEAM DATA】
1964年創部。部員123人(3年生60人、2年生63人※1年生入部前)。インターハイ出場7回(準優勝1回)、全国選手権出場5回。丸山祐市(ベルマーレ湘南)ら多くのJ リーガーを輩出している。