今夏の全国高校総体(インターハイ)陸上競技の女子学校対抗で、2位以下に大差をつけて初の総合優勝に輝いた浜松市立(静岡)陸上競技部女子。記録を更新するため部員同士が助言し合う、先輩にも遠慮しない――。部に受け継がれる姿勢が、日本一のチームの土台となっている。 (文・写真 小野哲史)
インターハイでは、今年6月の日本選手権400㍍の覇者・杉浦はる香(3年)=静岡・福田中出身=が同種目で2位、松島美み羽は留る(3年)=同・細江中出身=も走り高跳びで2位に。新主将の松本奈菜子(2年)=同・清水四中出身=が800㍍で5位になるなど7種目で8人が入賞した。
チームに一体感を生み出すリレー種目には特に力を入れている。4×400㍍リレーで優勝、4×100㍍リレーで2位。松本が「1人が速くても勝てない。リレーはチーム種目の象徴」と言うように、バトン練習に毎回30分程度を割く。
ウオームアップにも「200㍍エンドレスリレー」を取り入れている。リレーの固定メンバーだけではなく、誰が出場しても走れるように、走り高跳びや投てき種目以外の選手が全員参加する。
200㍍を1人が3回走り、回数を重ねるたびにペースを上げる。インターハイ100㍍ハードルで7位に入った藤森菜那(1年)=同・入野中出身=は「毎日やるので体力が付いた」と手応えを感じている。
ウエートトレーニングや補強運動にも力を入れる。杉浦が「スムーズな脚の運びが身に付いた」と話す「もも上げドリル」は、選手の走りに安定感をもたらす。
週3回は市の競技場で練習する。40人の部員がそれぞれの種目に分かれて専門練習に入るため、杉井将彦監督(50)が全員につきっきりで指導することはできない。そのため練習では部員同士で意見を交換し、アドバイスし合う。チーム内には一緒に強くなろうという意識が高い。藤森は「学年は気にせず、気づいたことは指摘するようにしている」と言う。
選手一人一人のレベルは異なる。しかし、松本の「各自の目標に向かって一生懸命取り組む姿勢はみんな同じ」という言葉通り、個々が刺激し合って成長し、その積み重ねの先にインターハイの総合優勝があった。
部の雰囲気や、生徒がどんな気持ちで練習しているかといった内面に注意するようにしています。
練習は当然、つらく厳しいものです。でも、つらいだけの練習では、メニューをこなすことが目的となってしまい、生徒は無意識に力をセーブしようとします。自分から積極的に取り組もうという気持ちも芽生えません。そこで、楽しく練習できる雰囲気をつくるよう工夫すると、生徒は今ある力を全て出し切れます。そうやって本当の力が身に付いていくのです。
ただ、リレー練習でバトンが次走者に渡らなかった時は叱ります。バトンを渡す者と受ける者が、腕を伸ばしてスムーズにバトンパスを行えるのが理想です。例年、4×100㍍リレーは支部大会で2レース、県大会、東海大会、インターハイでそれぞれ3レース走ります。条件もメンバーも異なる計11 レースで、33 回ものバトンパスを全て成功させることは容易ではありません。だから、バトンパスは成功の基準に、ある程度の幅を持たせ、確実に渡せる練習を心掛けています。