国体では得意のミドルシュートが冴えた

 

10月4日~7日、立川市泉市民体育館にて開催された東京国体少年男子バスケット競技で、東京都選抜が優勝を飾った。その立役者の一人である京北高校のセンター、浅見陸人選手(3年)=埼玉・富士見中出身=には中学時代からのライバルがいた。彼の活躍に発奮されて、大きく成長した様子を追う。(文・写真 青木美帆)

パスという大きな武器を手に入れた

中学時代からのライバル

福岡大学附属大濠高校(福岡)の3年生に、杉浦佑成選手というプレーヤーがいる。全国屈指の強豪校で1年生から主力としてプレーし、U-16、U-18の日本代表として海外経験も豊富だ。194センチの長身とボディコンタクトを物ともしない強い体でシュートを量産する彼は、今年の高校3年生の中では最注目の1人である。

そんな杉浦選手が中学3年生だったころに、インタビューをしたことがある。

「ライバルはいますか?」

 

質問の答えに彼が挙げた選手が、京北のセンター・浅見陸人選手だ。

先に全国的に大きく名前が知れたのは、浅見選手だった。2011年の春に開催された都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会(ジュニアオールスター)で、浅見選手はJOC最優秀選手賞を受賞している。この賞は、全出場選手のうち男女1人ずつしか選出されない名誉あるものだ。

杉浦選手は当時、浅見選手についてこう話していた。

インターハイ優勝直後の咆哮。取材陣に対しては控えめな印象だが、試合中は熱い選手だ

「ポストプレーもできるのにペリメーター(制限区域のすぐ外側)のシュートがうまいところがすごい。点の取り合いになったら絶対に負けたくない相手です」

実は「絶対負けたくない」という思いは、浅見選手も同じだったという。「自分にとっても杉浦は中学の時からのライバルです」(浅見選手)。スケールの大きさを感じさせる2人のライバル対決は、高校に入ってさらに熾烈なものになると思っていた。

突きつけられた「力の差」

しかし高校入学から約4カ月後、浅見選手は大きな敗北感を味わうこととなる。秋田県能代市で開催された全国高等学校体育大会(インターハイ)。この2回戦で浅見選手の京北と、杉浦選手の福岡大附属大濠が対戦した。結果は99-88で福岡大附属大濠の勝利だった。

2回戦屈指の好カードとなったこの試合で、杉浦選手は1年生にしてスタートを務め、30得点を挙げる活躍を見せた。「1年生として見てほしくない素材」と、福岡大学附属大濠の片峯聡太コーチもニンマリ。一方の浅見選手も途中出場でゲームに絡んだが、無得点、4ファウルという結果に終わっている。そして10月、共に候補として選出されていたU-16日本代表メンバーから、浅見選手は落選した。

「中学の時は『ライバル』って言ってもらえたけど、高校に入ったらすごい差がついていて…」

チームの大黒柱として、そして世代別の日本代表として順調に成長していくライバルの姿に浅見選手はあせりを募らせた。チームはなかなか結果が出ず、個人としても思い切った活躍ができない――。そんな中で浅見選手は地道に練習を重ねた。「杉浦と同じことをやっても意味がない。あいつにはないものを練習しよう」。中学時代から得意だったミドルシュートに磨きをかけた。

最終学年での開花

その成果が3年目の今年、ついに結実した。インターハイで全国制覇を達成。浅見選手本人も決勝で30得点の活躍でチームに大きく貢献した。さらに東京選抜メンバーとして出場した国体では、杉浦選手が所属する福岡選抜を決勝で下して、2つ目の優勝を重ねた。

東京選抜でも浅見選手は大きく活躍した。得意のミドルシュートとリバウンドが冴え、福岡選抜戦では23得点13リバウンドの「ダブルダブル」(得点、アシスト、リバウンドなどの記録のうち、2記録で2ケタの成績を挙げること。達成するのは難しい)という大活躍だった。

特に目を引いたのがパスの精度の高さだった。浅見選手の1センターが基本布陣の京北に対し、東京選抜は浅見選手とエン夢遠選手(成立学園高3年)の2センターがスタートに名を連ねる。浅見選手はエン選手に「ハイ&ロー」の攻めを提案し、練習を重ねてきたという。

ハイ&ローは、インサイドの2選手が組み立てるオフェンスパターンだ。ペイントエリアの高い位置に浅見選手が、低い位置にエン選手がポジショニングする。ディフェンスが浅見選手に注意を払っているときは、エン選手にパスを出してゴール下のシュートを決めてもらう。逆にエン選手を警戒しているようなときは、浅見選手が高い位置から得意のミドルシュートやドライブで攻める。

準決勝の宮城選抜戦で、これがハマった。浅見選手はディフェンスの状況をよく判断して、このハイ&ローを駆使。エン選手は26得点、浅見選手も20得点を挙げた。

特筆すべきは、この試合の浅見選手のアシスト記録がチームトップの「6」であったこと。パスを配球するのが役目であるガードよりも、点につながるパスを多く出していることは大きな評価に値するだろう。

そして、最後の舞台へ――

京北の田渡優コーチが今年2月に行われた関東新人大会で、浅見選手についてこう話していた。

「アイツが成長したら、攻守でプラス10点くらいは違ってくる。間違いなく今年のチームのカギになってくるだろうね」

190センチのセンターは、全国では小さい部類に入る。しかし、インターハイでも国体でも、対戦チームは浅見選手を止められず敗れた。ライバルにはない自分だけの武器を着実に育ててきた今の浅見選手は、紛れもない京北のキーマンであり、ひいては全国屈指の好選手だ。高校最後の舞台となるウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会)。杉浦選手と、同じ目線に立った浅見選手とのマッチアップが実現することを楽しみにしていよう。