北朝鮮は5月、「火星12」(14日)、「北極星2」(21日)、新型誘導ミサイル(29日)と3種類の弾道ミサイルを立て続けに発射した。国際社会が圧力を強化する中でも北朝鮮の挑発行動は止まらず、打つ手がないのが実情だ。国際社会はいら立ちを募らせる一方、無力感すら漂い始めた。

鍵握る中国

Q ミサイルの能力は?

火星12は約30分で約800キロを飛行し、ロシアに近い日本海に落下した。到達高度が初めて2千キロ以上に達したとされ、発射角度次第では4千キロ以上の飛行が可能で、米軍の基地があるグアムにも届くとみられている。また、弾道ミサイル開発の鍵を握る大気圏再突入に成功したとの報道もある。

29日に発射したものは短距離弾道ミサイル「スカッド」系列で、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる。北朝鮮の朝鮮中央通信は、精密誘導システムを導入した新型ミサイルで誤差わずか7メートルで目標地点に命中したと報じ、ミサイルの命中精度が向上したことを誇示した。

米シンクタンク「核脅威削減評議会」によると、北朝鮮は故・金日成主席時代の1984~94年に15回の発射実験を実施。続く故・金正日総書記体制下では2011年12月までに16回だったが、金正恩体制下では5年余りで既に70回を超えた。異なる系統のミサイルを同時並行で開発する姿勢が鮮明になった。

Qなぜ挑発を続けるのか?

専門家は「北朝鮮は核・ミサイル開発による軍事力の強化でしか米国に対抗できず、3代続く金王朝も維持できないと考えている」と指摘。今後も大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成に向けてミサイルの発射実験を繰り返し、核弾頭の小型化を目指して核実験を続けるとの見方を示す。

Q止める方法は?

相次ぐミサイル発射で緊張が高まっているが、鍵を握るのは北朝鮮の貿易総額の約9割を占める中国だ。米国や韓国、日本は北朝鮮包囲網に中国を巻き込み、中国に圧力をかけさせたい思惑だ。

中国は、4月の米中首脳会談以降、米国の制裁強化に足並みをそろえようという動きもあり、今回のミサイル発射は北朝鮮が中国への反発を示すとともに、中国の影響力を否定する狙いもあったとみられる。

 

【MEMO】3代続く「金王朝」 北朝鮮では「永遠の国家主席」金日成氏の血を引く「金王朝」が権力を掌握、3代続く強固な体制を築いている。金正日総書記は党総書記、国防委員長、軍最高司令官を兼任。金総書記死去後の11年末、金正恩氏は軍最高司令官に就任、12年4月に党第1書記と国防委員会第1委員長となり、権力継承を完了した。