新型コロナウイルスの重症化を防ぐため、国を挙げてコロナワクチンの接種を促しています。新しく開発されたワクチンなので、打ったら将来体に影響が出るんじゃないかと不安になっている高校生から声が寄せられました。内科医の建部雄氏先生に「コロナワクチンが将来体に影響が出ない”と考えられる理由」をわかりやすく解説してもらいました。(2021年9月時点での情報をもとに作成)

【高校生のギモン】新しくできたワクチン。「将来、体に影響が出るのでは?」と不安

「コロナワクチンを打つことで、将来健康状態に支障が出ることはあるのか?」

「何年後かに副作用が出る可能性はないのですか?」

「もし何年かたってから重篤な副作用が出るようなことがあったらとても怖いです」

ワクチンのmRNAは10日程度しか体に残らない

現在、主に出回っている「ファイザー社製」「モデルナ社製」の「mRNAワクチン」について、「接種の後に長期間体内に残留するため、ヒト細胞の設計図であるDNAに何らかの悪影響を残すのではないか」という心配や質問を多く耳にします。

mRNAは10日程度しか体内に残らないと予測

新型コロナウイルスのスパイクタンパクの設計図が記録されたmRNAは、接種により体内に入りスパイクタンパク質を産生した後、「急速に分解」されます。

これは各種の動物実験から明らかにされています。接種で投与されたmRNAは、ヒトの場合でも恐らく10日程度しか体内に残らないだろうと予測されています。

ワクチンでガンになるのは「起こりえない」

また体内でmRNAがスパイクタンパクを作り出す以外に、「mRNAがDNAに変換され、それがヒト細胞に取り込まれてガン細胞になってしまう」などの誤った情報もあります。ですが、実際にmRNAをDNAに変換するためには「特殊な酵素」が必要です。

この特殊な酵素は、基本的にヒトの体にはほとんど現れることがないため「起こり得ない」と判断されています。

万が一、mRNAをDNAに変換する酵素が現れたとしましょう。その場合も、mRNAから作られたDNAが、「さらに別のDNAに組み込まれる」という状態も「別の特殊な酵素」がなくては「起こり得ません」。

そのため、mRNAワクチンの接種によって、DNAに何らかの影響を及ぼすというような心配は一切ありません。長期的な健康への影響は皆無なのです

 

建部雄氏

 

たてべ・たけし 医療法人社団聖仁会横浜甦生病院勤務。総合内科・一般内科が専門。京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。