新型コロナウイルスの重症化を防ぐため、国を挙げてコロナワクチンの接種を促しています。特に副反応について、報道、SNSなどでも盛んに情報が出ているので、不安に感じる人も多いでしょう。実際に高校生から寄せられた疑問や不安について、内科医の建部雄氏先生に教えてもらいました。(2021年9月時点での情報をもとに作成)

【高校生のギモン】副反応が怖い。若いほど副反応が激しく出ると聞いて不安

海外では若い人たちの方が、副反応が重くなりやすいといった報道をテレビで見ました……。副反応が出てしまうことが心配です」

「10代へのワクチン接種と、他の世代への接種での副反応の出方や違いはありますか?」 

かかりたくないけれど副反応も心配…正しい知識を得よう

そもそもなぜ副反応が出るのか

まず、新型コロナウイルスワクチンの接種で副反応が生じる理由をお話ししましょう。

ワクチンを接種すると、「新型コロナウイルス=人生でたぶん初めて出会うウイルス」の「異種タンパク質」が体内で発生することになります。その免疫応答(外からの侵入者から身を守る目的で体に起きる反応)による「拒絶反応」によって、さまざまな症状が出ます。発熱や倦怠(けんたい)感、注射した部位の疼痛(とうつう)などです。年齢が若いほどこれらの症状が恐らくは伴います。

ただ、その症状はおおむね48時間程度で回復することが圧倒的に多いという特徴があります。

2回目の接種のほうが、副反応が強いワケ

今年4月JAMA Insightsに報告された米国疾病予防管理センター(CDC)のデータでは、接種した約166万人を分析したところ、接種部位の疼痛が出た人は1回目の接種後が約64%、2回目の接種後は約67%。発熱があった人は1回目の接種後で約7%、2回目の接種後で約22%。疲労感が出た人は1回目の接種後で約29%、2回目の接種後で約48%などとなっています。

厚生労働省のホームページでは「2回目の接種でウイルスと同じタンパク質が体内に入ってくると、1回目の接種ででき始めた抗体が1回目より強い免疫応答を起こす」という説明がされています。

これらの情報からも、高校生の方々は、その多くの方に接種後の副反応が発生するであろうと予想されます。

なぜ高齢者は副反応が弱く、若いと強いのか?

私自身が普段の診療で新型コロナウイルスワクチン注射を打っている中での印象でお話しますね。

いろいろな基礎疾患といわれる持病のある方も含む「65歳以上の高齢者の方」は、おおむね副反応はないか、あっても軽いものが大半でした。注射直後のアナフィラキシーショックも起こしません。

恐らく、年齢を重ねるとこれまでの人生の中で、さまざまなウイルス感染の経験が多くなります。副反応が軽い傾向があるのは、新型コロナウイルスに似た一般のコロナウイルスを経験しているためだろうと推測されます。この推測が正しいならば、新型コロナウイルスは自然界で偶然に登場した厄介な病原体ということになりますね……。

副反応が出る可能性が高いけれど多くは48時間で回復

めまいや吐き気があっても30分以内で回復

18歳~64歳の方(医療従事者)の場合、ときおり小柄な若年の女性が注射直後の経過観察時間内にアナフィラキシーショックではない症状として、めまい・嘔気(吐き気)の症状がちらほら見られました。ですが、30分程度の短時間、ベッドで安静にしただけで回復しています。

これらの状況は、先行して自らの国で積極的な接種を進めているイスラエルからの疫学的データの通りでした。

それ以外には、腎臓の病気で透析を受けている方・心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患の持病がある方も、接種直後にやはりアナフィラキシーショックではない症状として一過性のめまいや嘔気が散見されました。ですが、これも短時間ベッドで安静にしただけで回復しています。

接種後の副反応の程度については個人差があり、一定しません。ですが、接種後48時間程度で回復されています。

 

建部雄氏

 

たてべ・たけし 医療法人社団聖仁会横浜甦生病院勤務。総合内科・一般内科が専門。京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。