谷地星さん(岩手・黒沢尻北高校3年)の写真作品「怠惰」を紹介します。勉強に疲れ、机に伏せる友人を撮影したこの作品は、全国高校総合文化祭(紀の国わかやま総文2021)の写真部門で最優秀賞(文部科学大臣賞)を受賞しました。どのように撮影したのかを聞きました。

怠惰(第45回全国高等学校総合文化祭 紀の国わかやま総文2021 写真部門最優秀賞)

受験生の葛藤がテーマ

―作品のテーマを教えてください。

受験生の葛藤をテーマにしました。

もちろん、将来に向けてやる気がみなぎっている人もいますが、勉強をし続けなければいけない現実にマイナスな気持ちを持つ人もいると思います。そんな受験生の姿に焦点を当てました。

作品に対しては、見る人自身がどう感じたかは一人一人違うと思うので、多種多様な感想を持っていただければ幸いです。

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

教科書の配色やペンの配置、持ち手など一つ一つの小道具にこだわりました。顔面の邪魔をせず、でもよく見るといろいろなものが置いてある、二度楽しめる写真にしました。

まず、写真を見て印象に残るものはインパクトがあるものだと思い、巨大な目を中心に置きました。「目は口ほどにものを言う」ということわざのように、不可思議な目から鑑賞者がさまざまな感情を感じてもらえるようにしました。

じっと見ていてもいろいろな発見があるような味がある作品になるようにしました。

フィルムカメラで撮影、虚像づくりに苦戦

―何が難しかったですか?

フィルムカメラで撮影したので、その場で写真を確認できなかったことです。

秋の夕方ごろに、室内で蛍光灯の光だけで撮ったので、暗くなっていないか。ピントが合っているか、斜めになっていないか、なども確認できなかったので心配でした。

また、グラスを通して虚像をつくることが、なかなかうまくできず、調整をするのが大変でした。

被写体の前にグラスを置いて、大きな瞳の虚像をつくった

しかし、あとに確認すると、うまくいっていたのでよかったです。

―撮影中のエピソードを教えてください。

なかなか小道具の配置がうまくいかなかったので、モデルの子が長時間、机に顔を横にしている状態になってしまい、首が痛くならないか話しながら撮影しました。

撮影時には顧問の先生や部員など手伝ってくれた方々がいて、一人ではなく、みんなと協力して作品ができるということを改めて感じました。感謝の気持ちでいっぱいです。

とにかくいっぱい撮ってみて!

―よい作品を作るためのコツを教えてください。

まずは写真をとにかくいっぱい撮ってみることだと思います。そこから、動いている物体をぶれないように撮る方法や、暗い場所での撮影など、自分がしてみたい、作りたい作品を撮るためにカメラの詳細を学ぶことです。

自分のこだわりを持って、妥協しないことが大事です。撮影時には常にカメラの取扱説明書を持ち歩くことが重要だと思います。顧問の先生からは日常生活から構図を意識するように教わりました。

また、アマチュアでもプロの写真家でもたくさんの人の、さまざまなジャンルの作品を見て学ぶことも重要だと思います。

もし、コンテストに応募して思うように結果が出なくても、何度も挑戦することが大事だと思います。単に審査員と合わなかっただけで他の場では評価されるかもしれません。

何百枚、何千枚の作品の中から評価されるためには、最初にパッと見たときに受けるインパクトが必要です。部員や友達、先生などいろいろな人から感想をもらうことで、他人から見た自分の作品の印象が学べると思います。