7月に行われた放送部の全国大会「NHK杯全国高校放送コンテスト(Nコン)」アナウンス部門で優勝した下崎日菜乃さん(埼玉・浦和第一女子高校3年、アナウンス部)。同部門にエントリーした3129人(都道府県大会含む)の頂点に立った、日本一のアナウンサーだ。(文・写真 中田宗孝)

原稿作りに心を込めて

4月、「NHK杯全国高校放送コンテスト(Nコン)」アナウンス部門への出場を掲げた下崎さんの原稿づくりが始まった。原稿は、自校の校内放送での使用を想定した内容を題材とし、1分10秒以上1分30秒以内の文章にまとめる決まりだ。

日本一の高校生アナウンサーとなった下崎日菜乃さん

下崎さんは、ソフトボール部員が手にマメを作りながら行った大規模なグラウンド整備の様子を取材。「グラウンドを整地する部員たちは意外に楽しんでました。部長はコロナで満足に練習ができなかった悔しさを話してくれ、その思いは同じ部長として共感できた」

文章を書くのは好きだ。それがアナウンスでも生かせると考える。「私より上手に読める人はたくさんいます。特別澄んだ声をしているわけでもない。だからこそ、原稿の内容にこだわり、最高のものにしようと。自分のできることを伸ばして戦おうって」

何度も推敲(すいこう)を重ねたアナウンス原稿

大会用のアナウンス原稿は何度も書き直し、推敲(すいこう)を重ね、完成度を高めた。「コロナ禍でもやれることを精いっぱい頑張った、ソフト部員たちのガッツが浮きあがるような文章に仕上げました」

通学路でもアナウンス練習

下崎さんがアナウンスの際に常に心掛けるのは、「聞き手に思いが伝わるように声を遠くに飛ばすイメージで原稿を読む」ことだと言う。「そうイメージしながら話すと、私の声が聞き手に『ハッ!』って届いて、原稿の内容をしっかり伝えられると思っています」

もちろん、日々の読みの練習では、きれいな発声で文章をよどみなく読めるよう猛特訓した。「でも技術面ばかり意識しすぎて、『聞き手に内容が伝わってない』と、指摘を受けたんです。アナウンスは、文章の内容を『相手に伝える』のが何より大切だと学びました」

声を遠くに飛ばすようにイメージして練習を重ねた

大会が近づくと、最寄り駅から自宅まで自転車で帰る道中を読みの練習時間にあてた。「わざと遠回りして帰り、大通りでアナウンス原稿を復唱して。自分の出来に納得がいかなければ、家を通りすぎて『あと3回読むまで帰らない!』とか(笑)」

地道な努力が実り、県大会を突破して全国大会への出場がかなった。今回の「Nコン」は、コロナの影響により、アナウンス部門は事前に収録した音声データでの審査となった。

駅のホームで自分の優勝を知った瞬間は「放心状態だった」そうだが、他の先生に優勝を伝えてまわる顧問の福田宏子先生、部員やクラスメートからの祝福を受けて、ようやく喜びが込みあげた。

放送室にこもった日々、すべてが楽しく

アナウンス部では7月まで部長を務めた。「入部してから、ずっと部活が楽しかったです!」と笑う。

部の名前からは、アナウンスや朗読に励む印象を受ける。だが、下崎さんはじめ全部員が映像作品の制作にも取り組んでおり、学校行事の撮影などもこなす。「映像の編集作業で放送室に連日こもりっぱなしになることもあります」

現在は部を引退し、受験勉強に気持ちを切り替えている。

アナウンス部にはさまざまな思い出が詰まっているという。先輩のアナウンスに憧れて「私もこうなりたい」と入部を決めた。大会で結果が残せずに落ち込んだときは仲間たちに支えてもらった。下校時間になっても活動に夢中になり顧問の先生を困らせたこともある。部長として、みんなが居心地の良さを感じられる雰囲気づくりを目指した。

アナウンス部にはさまざまな思い出が詰まっている

「アナウンス、朗読、番組づくり……すべてが楽しかったんです。『Nコン』での優勝は、そんな部での良い思い出たちにリボンをかけてもらったような感じです」