私が通うイタリアのインターナショナルスクールの同級生の1人に、パレスチナ・ガザ出身の男子生徒、ユーセフさん(高校3年)がいます。今年5月には、11日間にも及ぶイスラエルからの爆撃を受けるなど、紛争地域のイメージが強いガザ地区。そこに住む高校生はどのような生活を送っているのでしょうか。ガザでの高校生活について聞きました。(高校生記者・もも=3年)

学校は7時スタート、午前で終了

―学校がある日のスケジュールを教えてください。

6時半ごろに起きてシャワーを浴び、7時に始まる学校に向かいます。学校は午前中で終わることがほとんどで、家で昼食を食べ、宿題をします。

午後にはサッカーの練習があり、夜の8時半ごろに夕食を食べ、11時半には就寝します。

パレスチナの街の風景

―ガザの高校で好きな授業は何でしたか。

パレスチナの高校は文学、技術、宗教、職業訓練などのいくつかの種類に分かれており、私は自然科学に重点を置いた高校に通っていました。そのため、物理、生物、化学などの理系科目をよく勉強していました。

学校の授業では特に化学が好きで、とても難しいことをたくさん勉強していました。生物も好きですが、授業自体は暗記中心でそれほど好きではなく、シラバス以上のことを自分で勉強していました。

戦争の時の行動を学ぶ授業が

―特別な授業はありましたか。

「戦争時にどう行動するか」について学ぶ授業がありました。

理論的なことと実践的なことの2つについて勉強するのですが、実際にガザは過去に何度も空爆の被害にあっているため、とても役に立つ授業だと思います。

―自由時間はどのように過ごしますか。

私も友達もサッカーがとても好きなので、サッカーをしたり、ビデオゲームで遊ぶ時も国際サッカー連盟(FIFA)を題材としたゲームをしたりします。私の家から20秒ほどのビーチに行ったりもします。

パレスチナ・ガザのユーセフさんの家から20秒ほどにあるビーチ

―授業以外に課外活動はしていましたか。

中学ではサッカーチームに所属していました。ボクシングをしていたときもあります。

「ガザから出ることは難しい」

―パレスチナの高校生はどのように進路を決めますか?

一般化はあまりしたくありませんが、ガザの人の多くは貧困の中に暮らしており、一日一日を生きるのが精いっぱいという子どもたちも少なくありません。

しかし、200万人もの住人がいるため、学生の数も多く、大学も数多く存在します。大学に入学するためには、大学によって入学に必要な成績を統一試験で修めることが求められます。

大学に入学できるほどの成績を修められる生徒は、比較的生活水準の高い家庭から来ていることが多いです。そうでない家庭の生徒はブルーカラーの職に就くことが多いです。

ガザから出ることは容易ではありません。ガザの外で勉強したい、暮らしたいと願う学生も多いですが、奨学金などが限られていて難しいのが現実です。

―パレスチナ料理にはどんなものがありますか。

ムサッハンとマクルバが代表的だと思います。ムサッハンはスパイスや玉ねぎ、パレスチナの特産品であるオリーブオイルを用いて調理された鶏肉の料理、マクルバは肉、ご飯、野菜炒めを一つの容器に入れ、固めた料理を指します。

―将来の目標は何ですか。

ガザでは封鎖の影響などで選択肢が限られていましたが、イタリアに来てからいろいろな可能性を知ることができ、学業面だけでなく人間的にも成長しました。今は、大学で医学や生物を勉強し、将来、世界に少しでも自分の足跡を残したいと思っています。

自分で水を浄化しないと飲めない

―ユーセフさんは現在はイタリアのインターナショナルスクールで高校生活を過ごしていますね。イタリアの生活で驚いたことはありますか?

文化やライフスタイルの違いはもちろんですが、イタリアでは電気が1日中通っていることに驚きました。

電力不足が続くガザでは、日によって昼間か夜間、最大でも1日8時間ほどしか電気を使えません。

また、水も、水道水はきれいではありません。飲用水にするには自分でフィルターを使って浄化処理をする必要があります。

幸運にも、私の家族は食べ物がなくて困ったことはありませんが、外国からの輸入が必要な食品のうちのいくつかは、2007年から続く封鎖の影響でガザでは食べられないということはあります。

―日本にはどのような印象を持っていますか。

ガザでは、東京リーグという日本政府と国連開発計画が主催する少年サッカーのチャンピオンシップ大会が有名で、特に若い世代には日本はいい印象を持たれていると思います。

政治面で言うと、日本はパレスチナを国家として承認していないので、承認することでパレスチナの抱える問題の改善に協力してほしいです。

パレスチナで起こっていることを知ってほしい

―日本の高校生に伝えたいことはありますか。

今年5月に起こったイスラエルからの空爆をはじめ、ガザで起こる暴力や戦闘を正当化してほしくありません。

5月の空爆では私の友人や家族はみな無事でした。ですが、道端で人が燃えているのを目撃したり、空爆の音で夜に一睡もできなかったりといった経験談は後を絶ちません。

イスラエルによってパレスチナとの間に壁が張り巡らされている

ガザだけでなく、ヨルダン川西岸地域を含んだパレスチナ全域で、イスラエルによるパレスチナ人の迫害が日常的に行われています。

日本の人たちには、パレスチナで何が起こっているのか知り、支援してほしいと願っています。