1人でキャンバスと向き合い、作品制作にまい進するイメージが強い美術部。どんな力が身につき、どんな経験を積めるのでしょうか。強豪として知られる甲府第一高校(山梨)美術部の皆さんに、部の「10の魅力」を挙げてもらいました。

1、個性あふれるメンバー

第一に、美術部は個性の集団です! 本校美術部(通称「一美」)では、男女合わせて28人の部員がお互いを高め合いながら活動しています。

作品制作、イベントの開催両方に全力を尽くしています。新入生歓迎会では仮装パーティーをするなど、笑いが絶えない雰囲気です。

作品にはそれぞれの個性があふれ出ており、写実的なものから抽象的なものまで自分に合った作品を制作しています。

4月、新たに部員を迎える。緊張を解きほぐし上下の垣根を取るために、新入生歓迎会は恒例の仮装パーティー

2、技術が向上する

経験者はもちろん、初心者も技術が格段に上がります。構図の取り方、実物をよく観察する力などが身につきます。

3年間を通して多数の作品を制作し、時には先生や同級生、先輩と活発に意見を交わします。作品に足りないものは何かを自分で気づく力も培うことができます。その技術は生涯にわたりきっと役立つでしょう。

恒例の作品プレゼン大会。自身の作品をアピールし他者の作品の講評をすることで、絵の見方や技術等を共有していく

3、感性が豊かになる

これからの時代は感性の豊かさが大切です。美術部では、制作の過程でアイデアを収集することの大切さや表現の奥深さを実感します。

他者の感性によい影響を受けることもたびたびあります。日頃から美術館やギャラリーに足を運び、発想力鍛え、感性を養うことができるのも魅力です。

お台場で開催されているチームラボボーダレスへの鑑賞ツアー。デジタルアートの最先端技術に触れ、感性全開

4、楽しいイベントがたくさん

本校では、さまざまな美術館を巡る鑑賞ツアーや、実技講習会、夏には海でサンドアートを行う合宿などを実施しています。イベントを楽しむだけでなく、自分の世界を広げたり、先輩・後輩の絆を深めたりすることができます。他校の美術部生徒との交流も有意義です。

ここ数年の夏季合宿では静岡の海岸で巨大なサンドアートを制作。この年のテーマは「巨大ウミガメの誕生」

5、3年間を通して自分の色が確立される

入学後は何を描いていいかわからない部員も、自身と対話しながら枚数を重ねていくうちに、自分のスタイルが確立されていきます。

本校では集大成として、卒業時に校内で個展を行い、成果を発表しています。

3年生の校内個展風景。制作したすべての作品やデッサン類、思い出の詰まったパレットなどを展示し、足跡をふかんする

6、キャリアに結び付く

将来美術系の職業を目指す生徒は、毎年のようにいます。本校では始業前に、朝デッサン会を行っています。この朝練習には、他の部活に所属している人も参加しています。

静物や石こう像とほぼ毎日向き合うことで、観察眼を高め、皆で情報を共有しながら目的意識を高め合っています。

朝の始業前、静物や石こう像などを真剣に観察、美術室には鉛筆の音だけが響き渡る。美大受験生も大勢所属している

7、発表の機会がたくさんある

美術のコンクールはたくさんあり、出品や受賞を目標に取り組むことができます。また本校では「甲府第一美術館」をコンセプトに、校内のあらゆるところに部員の作品を展示しています。

全校生徒から鑑賞してもらうことで、さらに良い作品を作ろうとモチベーションが向上し、技術を磨くことができています。

年6回ほどのコンクール、イベントに出展している。写真は県内美術部最大イベントである「高美連展」風景

8、個性が尊重される

一美ではそれぞれの個性の尊重に重きを置いています。制作中にお互いの作品の良さを褒めあったり、日替わりで自分のことを話すトーク&ディスカッションを設けたりしています。

好きなことや、将来の夢等を共有することで、お互いの個性を理解し、尊重することができています。

終わりのミーティング時には、順番に5分間のトーク&ディスカッションを行う。お互いの個性を尊重し合うことが目的

9、表現分野や表現対象、素材が豊富

美術の表現分野は多岐にわたります。絵画、デザイン、彫刻、立体、工芸など、最近では映像表現も人気です。

1つの表現にとらわれることなく、多角的な視点から作品制作をすることが可能です。本校でも、最近では鉄を扱う生徒が出てきて、溶接を行う生徒もいます。

美術の表現分野、技法は多種多様。溶接講習を受けた生徒は鉄も扱えるようになり、表現の幅が広がる

10、おそろいのツナギで団結力アップ

ツナギは美術部のユニフォームでもあります。本校では背中に「一美」マークを印刷し、カラフルなツナギ姿で活動。モチベーションの向上にもつながっています。

一生懸命制作に励んだ痕跡が汚れとなり、卒業する頃には宝物になります。ツナギは汚れていたほうが似合いますよね!

普段の活動風景。背中に「一美」のロゴを印刷したカラフルなツナギを着て和気あいあいと制作に励む

部活データ

部員28人(3年生6人、2年生15人、1年生7人)。週5日活動。部訓は「個性全開!」。12年連続全国高等学校総合文化祭出場、SEIKA AWARD2020・SEIKA AWARD賞受賞など。