質問

国の無駄遣いを減らせば増税は不要?

野田首相が消費税を増税しようとしていますが、閣僚の方々は単に消費税を増やせば国の財政が改善すると思っている人が多いように感じます。しかし、日本の財政が厳しいのは国の無駄遣いが主な原因なので、それを解決せずに増税しても意味がないのではないでしょうか? (高校3年男子)

回答

支出を減らすのは限界

4月号のこの欄で、なぜいま消費税を引き上げようとしているのかということをお話ししました。それは国の財政が赤字だからです。それではなぜ赤字なのでしょうか。

国が赤字ということは、支出(国家公務員の人件費やいろいろな政策の経費)を収入(ほとんどは税収)で賄い切れないということです。だから足りない分は借金(国債の発行)をしなければなりません。

無駄遣いをなくせば増税しなくてもいいのではないか。これは多くの人が抱く疑問です。実際、民主党が政権を取った2009年総選挙では、予算を節約することで16兆8000億円という財源を生み出すことができると約束していました。

しかし結局、民主党はそんなに「無駄遣い」はなかったと言わざるを得ませんでした。確かに国会議員の定数削減や公務員の人員削減など削れる部分はあるでしょう。しかし国の支出の最大のものは社会保障関連費用なのです。2012年度予算で言うと、予算総額は90.3兆円ですが、そのうち21.9兆円は国債費(国債の償還や利払い)です。そして最大の支出項目は社会保障関係費で26.4兆円、それから地方に分配する地方交付税交付金が16.6兆円です。何かと評判の悪い公共事業は4.6兆円しかないし、公務員の人件費は5兆円ほど、防衛費も4.7兆円です。

しかもこれから高齢化が進むと、福祉や医療など社会保障関係費はどんどん増えます。いまのままでも毎年自動的に1兆円以上も増加します。その意味では、社会保障の在り方を根本的に考え直さないと国の財政をバランスさせられません。

一方、収入を見ると今年度予算の税収見込みは42.3兆円しかありません。このため政府は44.2兆円の国債発行(すなわち借金)で収入を穴埋めすることにしています。この発行額は過去最高水準です。税収よりも借金が多いというような状況をいつまでも続けられません。

だから増税が必要なのですが、同時に支出を切り詰める(つまりは社会保障関係費が増えないようにする)にはどうしたらいいかを国民的に議論する時期に来ていると思います。

ふじた・まさよし:1948年生まれ。東京大学卒業後、「週刊東洋経済」記者・編集者を経て「ニューズウイーク日本版」創刊プロジェクトに参加。同誌編集長、編集主幹。現在はフリージャーナリストとして活躍中。