大学生活は、高校生活とは大きく変わります。とりわけ地元を離れて一人暮らしを始めると、その違いは大きなものです。地方の高校生の大学進学を応援する東京大学の学生団体「FairWind」に所属する大内山辰志さん(文学部3年、鹿児島県立鶴丸高校出身)による大学生活の体験談や、高校生へのアドバイスを紹介します。

今回お話しするのは、「高校生活と大学生活の違い」についてです。

とは言っても、高校生活も大学生活も人によって様々、十人十色です。

今日お話しするのはあくまで僕個人の生活に基づいたものであることはご了承いただいた上で、

少しでも皆さんの大学生活に対するモチベーションを上げたり、高校生までのうちにやっておきたいことを感じてもらえたりできればと思います!

寮生活でぶつかった「食事」の壁

まずは僕の基本情報から。

地元は鹿児島で、地元の予備校で1年間浪人したのちに、東京大学文科三類に入学しました。

現在は寮で生活しています。

僕の寮ではご飯は出ないので、食事は自分で作ったり、買ったり、外で済ましたりしなければいけません。

実家では毎日母が食事を作ってくれていたため、大学生になって初めてぶつかった壁はここでした。

食材を買い、調理して盛り付けて、そして食べた後は食器を洗う。

この工程を全て一人でするのがどれだけ大変なことかを実感しました。

しかもそれを母は家族三人分、毎日作っていたと考えると頭が上がりません。

おそらくこの記事を読んでいる皆さんも、今は保護者の方に食事を用意してもらっている人がほとんどなのではないでしょうか。

感謝しましょう。そして味わって食べて、たくさんおかわりしましょう。

僕もたまに実家に帰ると、久々の母の料理がとても美味しく感じます。

東京での僕はというと、実はほとんど自炊はしていません(たまにはします)。

コンビニやスーパーで買って食べることがほとんどで、たまに友達と外食に行ったりしています。(コロナ前は学食で済ますことがほとんどでした!)

もちろんそうなると、自炊するのに比べてお金はかかってしまうわけですが、僕は自炊にかかってしまう時間を他のことにあてる方を優先してしまいました。

同じ東大の友達でも継続的に自炊をしている人もいますが、自炊をしないことが全くもって悪いことかというとそんなことはないと(自分では)思っています!

食事のバランスも気になるところかとは思いますが、最近はコンビニのサラダなども充実してきていますし、学食のメニューはたくさん野菜を提供してくれているのでなんとかなると思います。

いかに楽にバランスの良い食事を取るのか、安くて美味しいメシ屋はないか、こだわりの自炊方法はないか。

高校生のときには全く考えなかったそんな話を友達とするようになったのもとても楽しいです。

金銭感覚がついてくる

今でも自分で食事を用意している人もいるとは思いますが、

大学生になるタイミングで自分の食事を自分で用意しなければいけなくなる人は、自分ならどのような食生活を送るか、今のうちから検討しておくと良いでしょう!

自分で食事を用意するようになると、

この食材は大体いくらくらい、弁当ならいくらくらい、外食なら相場はこのくらいといった金銭感覚も次第についてきます。

そしてもちろん食料品だけでなく、洗剤、シャンプー、洋服などなど、生活に必要なものの相場もなんとなくつかめてくるようになります。

これも、僕が高校生のときはなかったものでした。

高校生のときには、これらの生活必需品は親が用意してくれていて、自分のお小遣いから出ていくものは友達と遊びに行くときだけだったからです。

そのお小遣いも、特に働いたわけでもないのに親からもらっていました。

高校までの「お小遣い帳」が役立つ

大学生になり、バイトを始めました。

収入としてお給料が月にいくらで、奨学金がいくら、支出として学費がいくらで、寮費がいくら、携帯代がいくら、残ったものから食費と日用品と…まさに自ら「家計」をどうするのかを考えなければいけなくなりました。

ここで僕が高校生までにやっておいてよかったこととして、「お小遣い帳」をつけていたことです。

少ないお小遣いの中でも、お小遣いをいくらもらって、遊びに行って何にいくら使ったのかを高校生のときも記録していました。

その癖がついていたので、今でもきっちり家計簿をつけて、自分が何にいくら使ったのかがすぐに分かるようになっています。

それを把握することで、高校生のときまでに親がお小遣いとしてくれていたお金の重みをすごく実感します。

バイトで自分で働いた分だけお金をいただくという経験をしているとなおさらです。

生々しいお金の話になってしまいましたが、皆さんもぜひ、今のうちから「お小遣い帳」をつけてみましょう。

そしてお小遣いをもらったときは感謝の気持ちをしっかり伝えましょうね!

大学生になったら、お金の使い方も自分でアレンジしながら考えなければいけません。

食事にお金を使うのか、洋服にお金を使うのか、趣味にお金を使うのか、毎月バランスを見ながら調整していく必要があります。

もちろん大学生であれば学業が最優先の中で、バイトを週にどれくらいするのかを考え、時間の使い方も自分なりのアレンジが必要になります。

そして大学生になると、授業の時間割も含めて自分でアレンジすることができます。

皆さんは、授業の「単位」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

大学生のきょうだいがいる人はよく耳にするかもしれませんが、単位は大学生特有の言葉ではありません。

高校生の皆さんも無意識のうちに単位を取得しているのです。

時間割を自由に組める

高校生はクラスによって時間割があらかじめ決まっています。

その時間割通りに授業に出席し、テストを受けて一定の点数を取ることで、その授業の単位を取得することができます。

進級・卒業には必要な単位の数が決まっており、それを全て揃えることで先に進める仕組みになっています。

大学生になると、この単位数を自分で計算しなければなりません。というのも、一人一人に決められた時間割がないからです。

例えば英語で2単位、中国語で2単位、法学の分野で2単位、経済学の分野で2単位といったように、それぞれの科目や分野に応じて必要な単位数が決まっています。

その単位数さえ揃えれば、自分が好きなように時間割を組んでいいのです。

そのため時間割の組み方によっては、平日なのに一日中授業がない日(大学生はこれを「全休」と呼びます)を作ることができます。

全休を作ってたくさんバイトを入れたり、友達と遊びまくったり、読書に耽ったり、思い思いに自分の時間を過ごせるようになります。

最終目標は「卒業論文」

また、大学や学部にもよりますが、多くの学部は卒業のために「卒業論文」を書きあげることが必須とされています。

4年間の自分の勉強の成果として、自分でテーマを定めて研究し、数万字の論文としてまとめあげなければなりません。

高校の勉強の最終目標が大学入試であるのに対し、大学では多くの学部で卒業論文が最終目標になるので、

どんな卒業論文を書きたいのか、そのテーマについて早いうちから思いを馳せ、

それを目標に、自分の専門分野についての知識や思考力を鍛えることができるような授業の選択をできると良いでしょう。

繰り返しになりますが、もちろん全ての学部が卒業論文を課しているわけではありません。

また、卒業論文や自分の専門分野に直結しない授業でも、自分の興味に応じて受けられるものももちろんあります。

大学生も進路に悩む、高校生のうちから進路と向き合って

さらに、大学生は単位を揃えたり、卒業論文を書いたりしながらも、卒業後の進路(就職や大学院への進学)についても考えなければいけません。

高校生のときは、みんな同じように授業を受けて、ほとんどの人が同じような科目を勉強して大学受験をすればよかったのですが、

大学生は進む道が本当に多様で、自分の頭で考えて決断しなければならない場面がたくさん増えてきます。

自分はどのようなことに関心があり、どのような道に進むのか。

僕自身もまだまだ悩んでいる最中です。

高校生の皆さんも忙しい毎日かとは思いますが、ぜひ今のうちから自分と向き合う時間が少しでも作ってみてください。

大学生になってからの自分の助けになるかもしれません。

大学生活は自由も責任も大きく、地元離れて気づいた感謝

さて、長くなってしまいましたが、

大きく分けて食事のこと、お金のこと、そして大学での勉強のことについて、

僕の高校生活と大きく変わった点をお話ししました。

全体を通して言えることは、大学生は本当に自由が増えて、たくさんのことを自分でアレンジすることができます。

それはとても魅力的で楽しいことである一方、自分の行動に対する責任も大きくなることを表しています。

学生でありながら、大人の世界へと足を一歩踏み入れるのです。

また、大学生になった今、ご飯を作ってくれる人がいて、気が抜けていたらしかってくれる人がいる環境がどれだけありがたいものだったのか、

とても身に染みて感じています。

皆さんも地元を離れて初めて気づくこともたくさんあるとは思いますが、

感謝の気持ちは伝えられるうちに、行動で示すのもいいですが、しっかり言葉で伝えておきましょう!

大学生活は、きっと皆さんが思っているよりも何倍も自分の頭で考えることが多くて、そして皆さんが思っているより何百倍も自由で楽しいものです。

今の生活を大切にしつつ、時には来たる大学生活に思いを馳せてみるのも良いのではないでしょうか。

 

 

 

【FairWind】東京大学の学生がつくる団体。地方と都会の教育格差の解消をめざして、東大生と地方の高校生との交流などの活動をしている。